【ボクらの働き方】倉貫義人(株式会社ソニックガーデン代表) × 仲山進也(楽天株式会社 楽天大学学長/仲山考材株式会社 代表取締役/横浜マリノス株式会社 プロ契約社員) × 宇田川元一(埼玉大学准教授)

【ボクらの働き方 第1回】倉貫義人(株式会社ソニックガーデン代表) × 仲山進也(楽天株式会社 楽天大学学長/仲山考材株式会社 代表取締役/横浜マリノス株式会社 プロ契約社員) × 宇田川元一(埼玉大学准教授)

第10回:日本人は「フォーミング」体質

仲山

サッカー日本代表の歴代監督のチームビルディングスタイルを考えてみたことがあって、トルシエ監督は「俺の言うことを聞け!」って第1(フォーミング)ステージで100点を取りに行くフォーミングスタイル。ジーコ監督は真逆のトランスフォーミングスタイルで、「自分たちは『黄金の中盤カルテット』って呼ばれてたし、みんなも自由にやったらトランスフォーミングできるよ!と、中田英寿・中村俊輔・小野伸二・稲本潤一というスター選手を集めたけどうまくいきませんでした。中田選手がグラウンドに倒れ込んで天を仰いでいた、あの大会です。

宇田川

なぜダメだったんですか?

仲山

欧米って「自己主張」から始まるじゃないですか。文化的背景が違う人が集まるので、まず自分を理解してもらうためにストーミングから入る必要がある。人が集まったら「じゃあストーミング始めましょうか」という感じです。それを「ストーミング体質」と呼んでいます。これに対して、日本人は「フォーミング体質」です。島国で同一民族なので「言わなくてもわかってるよね」と空気を読むことを求められる。だから、「自由にやっていいよ」と放っておくだけだとストーミング超えできないと思うんです。で、第4ステージのトランスフォーミングには遥か及ばず、第1ステージのまま敗退した感じがします。
その次が、オシム監督。オシムさんはファシリテーター型で、次のステージにうまく進むようにしていた感じがするんです。例えば「走って走って走れ!」と言って、自分のポジションに留まってたら怒られるような練習をするわけです。そうしたらとりあえず走らなきゃいけないから選手はみんな動き出すんだけど、みんながバラバラに動き出すと、ぶつかったりとかするし効率よくないので、そのうちみんなが「どうやって動く?」みたいなことを打ち合わせするようになってきて。

倉貫

考えるようになったんですね。

仲山

そう。それで有機的な連動性が生まれて強くなりました。でも病気で倒れて岡田監督になった。岡田さんは基本的には「俺の言うことを聞け!」スタイル。

倉貫

規律型のイメージ。

仲山

でも、ある時から選手に自主性を持たせたいと思うようになり、自分のスタイルを変えようとしたんだけど、ストーミングの谷を越えるまでに何連敗もしてるうちに自分の首が危なくなって、しかたなく元の指示命令型に戻すということを繰り返した。最終的に「雇われ監督の立場だと限界がある」と思ったから今度はFC今治でオーナーになった、と僕は見ています。
その次のザッケローニ監督は、イタリアのACミランで個性の強い選手たちのストーミングを「みんなファミリーなんだ」と言いながらうまくまとめて優勝した人です。その手腕を買われたと思うんですけど、日本人がフォーミング体質だと知らないから、たぶん来日した時に、「お、もう結構ファミリーになってるじゃないか。それぞれ言いたいこと言ってバラバラな状態じゃなくて、まとまっている」みたいに、第1ステージ(フォーミング)を第3ステージ(ノーミング)と見間違えたのではないかと見ています。

倉貫

チームができてると思っちゃった(笑)。

仲山

そう。もう第3ステージだと思っちゃった。第1ステージなのに。みんながこう空気を読んで……

倉貫

だたおとなしいだけですよね。

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仲山

あくまで「他律」でピシッとやってる状態を。

倉貫

オシムさんよかったな。

仲山

オシムさんよかった。

宇田川

そう。素晴らしい監督でしたね。

倉貫

ほっといて自由すぎてもダメなんですよね。

仲山

そうそうそう。日本人はほっといても、なかなかストーミングを超える文化にはなりにくいと思うんですよね。よっぽどのことがないと。

宇田川

そうでしょうね。

仲山

だいたい日本のチームが世界大会で優勝した時って、「キャプテンが怪我をして決勝に出られない!あいつのためにがんばろう!」とか「震災からの復興のために!」と言ってみんなが一致団結するようなパターンが多いと思うんです。

宇田川

先日のUAE戦もそんな感じでしたよね。

仲山

まさに「主将の長谷部が怪我した」という。そういう時の団結感ってすごんですよ、日本って。そういう外部要因がないとなんかバラバラなんだけど、みんなの共通のお題目があった瞬間によくなる。震災後のなでしこジャパンはワールドカップ優勝したし、楽天イーグルスも13年に優勝したし、みんなそうなんですよね、外部要因で一致団結みたいな。

宇田川

岡田監督の南アフリカ大会の時って、かなり直前まで負けが込んでたじゃないですか。それでミーティングをして、闘莉王選手が「俺たちどうせ下手くそなんだから一生懸命やるしかないだろ」と言って、あの松井選手がすごく守備を頑張る、みたいになってベスト16までいけた、みたいな話はよく聞くんですけど。

仲山

選手だけのミーティングをやって、闘莉王選手がストーミングのきっかけをつくって、みんなが本音を言い合えたことでストーミングを超えられたパターンですね。

宇田川

だから「みんなそう思ってたんだ」とわかるとか、「言っていいんだ」と思えるようになることが大事。

倉貫

口火を切るやつが出るんですね。

宇田川

そう。口火を切るってすごいことです。

倉貫

勇気いりますね。

仲山

いつもだいたい帰化した外国人選手がキーマンになるですよ。ラモス選手とか、闘莉王選手とか。

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倉貫

その辺は日本人のメンタリティじゃないから、言えちゃうんですよね。

仲山

そう、ストーミング体質だから。

倉貫

怖いもんないのかな?

宇田川

それが普通だと思ってるんじゃないですかね。