【ボクらの働き方】倉貫義人(株式会社ソニックガーデン代表) × 仲山進也(楽天株式会社 楽天大学学長/仲山考材株式会社 代表取締役/横浜マリノス株式会社 プロ契約社員) × 宇田川元一(埼玉大学准教授)

【ボクらの働き方 第1回】倉貫義人(株式会社ソニックガーデン代表) × 仲山進也(楽天株式会社 楽天大学学長/仲山考材株式会社 代表取締役/横浜マリノス株式会社 プロ契約社員) × 宇田川元一(埼玉大学准教授)

第11回:「みんな同じ」ではなく「みんな違う」に揃える

宇田川

僕の好きな作家さんで…劇作家の平田オリザさんなんですけど、彼の本で『分かり合えないことから』っていう本があるんです。その中で、みんな「わかり合えてる前提」だから対話ができないって言ってて。実際は分かり合えていないことっていっぱいあって、本当はみんなそれぞれ全然違うじゃないですか、会社の中でも大学の中でも。全然違うんだってことを認めたところから初めて対話が可能になるんだって話をしてるんです。我々がつい考えちゃう一致って、「みんなが同じである」という一致だと思うんですけど、そうじゃなくって、「みんな違う」ということについて合意していという事こそが一致というか、そういうものなんだと思うんですよね。それを表に出すために、「違う」と言える環境をどう作るかっていうのがすごく大事なのかなって。これは個人の能力をどんなに育てていっても破れない壁だと思うんですよ。

仲山

OSのところですもんね。アプリを磨いていってもダメ。

宇田川

そうなんですよね。

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仲山

僕らがチームビルディングをやる時は、みんなにストレングスファインダーなどの「タイプ診断」をやってもらうんです。名札に5つの強みを書いた状態でいろいろアクティビティをやるんです。そうすると、書いてある通りの言動をする人たちがいっぱいいるから、それをフィードバックするんです。「今のコメントって最上志向っぽいですね」とか、「そうやって腕組んで”うーん”って考えてたのって着想っぽいですよね」とか。すると、「えっ、みんなそうじゃないの? 自分だけなの?」って、自分の強みに気づいていくんですよ。
自分にとって「当たり前」だと思ってると、他人に対しても「ここまでやるのが当たり前だろう」って要求しがちです。すると、その過度にハイレベルな要求は裏切られるから、イライラするっていうことが日々起こることになります。自分の強みのレベルで他人に要求をするのは不自然なことだと気づくと、期待値が適正なところまで下がるんですよね。そうすると裏切られることもなくなり、しかも自分が苦手なことを嬉々としてやってくれる人がいるということもわかってくると、素直に感謝できるようになり・・・みたいな変化が起こります。

倉貫

チームってそのためにある。

仲山

そのためにある。苦手なことをしないために。

倉貫

そうそう。僕らの会社、よく言われるんですけど、「そうしたらみんなフリーランスみたいなもんですか?」って。フリーランスでもやっていける人たちだけど、会社でやってます。別に稼ごうと思えば稼げる、サボろうと思えばサボれる人たちなんだけど、結局みんなそれなりに働いて、報酬も一緒にしていて、ベーシックインカムでもいいって思えるのは、フリーランスだと実は自由じゃないから。自由だと思われがちなんだけど、苦手なことも全部1人でやんなきゃいけないので。

仲山

できることが限られてくるんですよね、なんか。

倉貫

そう。会社員よりはちょっと自由だけど、会社員時代に総務や経理の人がやってくれてたところを自分でやんなきゃいけなかったり、営業が苦手な人も営業やんなきゃいけなくなると、割と選択肢の自由はあるけどそこまで自由にはなれてない、みたいなことになる。それが僕らのようなチームでやると、苦手なところをやってくれる。例えば僕は細かいことや、繰り返しの仕事が苦手なんだけど、うちの副社長はそれをやってくれるし、新しいことをやるような僕の得意な仕事は回してもらえる。営業が苦手なエンジニアたちからすると、営業とかマーケは僕らがやるから、一緒に組めるし。そしたらフリーランスやってるよりも圧倒的に自由になれる。その、やりたくないことをやらなくていいのがチームだなって(笑)。その代わり強みがないとただの足手まといになるので、本人も周りも辛くなっちゃうので、尖ってるところがないとあれですけど。

仲山

倉貫さんの会社は、入社したら最初「修行中」のステータスになるんでしたよね。

倉貫

うん。その、自分の得意領域を見つけてもらう、伸ばしてもらう。苦手なところ埋めるより得意領域伸ばした方がいいので。