【ボクらの働き方】倉貫義人(株式会社ソニックガーデン代表) × 仲山進也(楽天株式会社 楽天大学学長/仲山考材株式会社 代表取締役/横浜マリノス株式会社 プロ契約社員) × 宇田川元一(埼玉大学准教授)

【ボクらの働き方 第1回】倉貫義人(株式会社ソニックガーデン代表) × 仲山進也(楽天株式会社 楽天大学学長/仲山考材株式会社 代表取締役/横浜マリノス株式会社 プロ契約社員) × 宇田川元一(埼玉大学准教授)

第14回:「できること」を発信することが自分の立場を作ること

宇田川

世の中的に、大学の准教授という肩書きだと、なんでも答えを知ってるって思われる方もいるんですが、僕はちょっとしか知らなかったりするんです。とはいえ組織論とか組織開発については自分も噛んでるところだから、何か言えって言われたら言わなきゃいけないなって思うんですけど。どうしたらいいですかね?(笑)この先俺はどうやって生きていったらいいのかな(笑)。

倉貫

じゃあ最後このテーマで締めましょうか。宇田川先生どうしたらいいのか問題(笑)。

宇田川

地道ではないんですけど、自分がやるべきだと思ってやってきて、東京に10年ぶりに帰ってきたら、いろんな人が「話しませんか?」と言ってくれて。それはすごく嬉しいんですけど、何で僕に声がかかってるのかもあんまりよくわからない。でも悪い気はしないじゃないですか、全然。しかしいまいちモヤっと、悩みを抱えている、いちアラフォー教員(笑)。

倉貫

僕も割と呼んでもらってしゃべってますけど、そんな派手なことをしてるつもりはないしうちの会社も派手じゃないから、地道に地味なことをやってるんですけど。究極それをただ続けるだけだろうなと思っているんですよ。
25、6歳の時に、プログラムのシステム作って、システムの事例取材が来て、雑誌に載ったことがあったんです。すごく若いうちに載ったんですね。その時先輩に言われたのが、「今がおまえの人生のピークじゃないのか」って(笑)。

Z1A3073
仲山

雑誌なんかに載るなんて、と(笑)。

倉貫

そうそう。これが人生のピークだぞと。後は下り坂かーと思ったんですよ。でもそれは悔しいなーと思いつつ衝撃的だったんだけど、それがよかった。割と常に今が人生のピークだと思ってるので、派手なこともしないし、やらなくなることもないし、やってたことを全然変わらないようにやってる。常にピークぐらいの気持ちだから、ここで派手なことやったら逆にもうダメですね(笑)。

宇田川

なるほど、いいですね。

倉貫

そこでこうのぼせ上がらない。あの時のあの先輩の言葉がいつもあってね。あそこでもうちょっと調子に乗らせてくれてたら違う企画してたかも。

仲山

「もも前」経営で頑張ってたかも。

宇田川

なんか「もも前」って力入りがちになりますよね。あんまそうしないようにしてるんですけどね。

仲山

そういう「もも前」ではない組織の在り方、働き方みたいなのが今だんだん注目される波がきてるから、声がかかるようになってるんですよね。トレンド的なものが過ぎればまた元に戻るだけかなと。自分たちがやってることは自分が楽しいからやってるだけだから、別に世の中のトレンドとは関係なく続けていくだろうし。でもたぶん大きな流れとして、これまで企業の成功の定義に「大きくなること」があったと思うんだけど、実は大きいほどフォーミング体質が固まってくるから、世の中の変化のスピードに対応するのがだんだん難しくなってきた。もう正社員で終身雇用もきつくなってきたから、副業してもらって、自活力つけてもらわないとね!みたいな雰囲気にもなってきて。そんな流れは数年のものじゃないから、もっと長続きはすると思うんですけど、「僕ら10年ぐらいこのスタイルでやってます」みたいなのが、まだ珍しいうちは呼ばれるかも(笑)。

倉貫

まだまだ続く(笑)。

宇田川

そうか。まとめると、自分の大事にするところをちゃんとある意味信じて、大事にして、それで必要があればやっていって。

仲山

あと最初の「全部を知っているわけじゃない問題」でいうと、僕、出身が北海道なんですけど、北海道の人あるあるで、東京で「あの人も北海道だよー」とか言って引きあわされるじゃないですか。「やだなー」って思いながら、「北海道ですか。どこですか?」「旭川です」「函館です」「しーん…」みたいな感じで、遠すぎてお互い行ったことがないから話が終わるんです(笑)。似てると思ったけど違う、と判明した人の方が仲良くなりにくいみたいなのもありますよね。研究の専門分野でいうと、「法学部の教授です」「じゃあちょっと聞きたいんですけど土地のことでもめてまして」「ぼく刑法なんだけど…」みたいなことがありますよね。

宇田川

そうそうそうそう。

仲山

だから「できることはこれです!」というのを発信しておけばいいんじゃないですかね。

宇田川

そうなの。そうなんですよ。

仲山

勘違いした人がこないような環境を作っておけば、そこで悩むことはない気がします。

宇田川

そうですね。

仲山

僕は、Eコマース業界の人だと思われて、「プログラミングできるんですよね」「バックオフィスのシステムはどれがいいですか」なんて話しかけられたら全く役に立てないから、「人に関することしかわかりません」と発信して、そんな人からは話しかけられないようにしてます。「そこしかワカリマセーン」って平気で言えるためには、自分の興味持ってるところは「呼んでくれたらまあまあイケるよ?」ぐらいにしておきたいなと。

宇田川

なんかこの鼎談全体の話につながりますね。

倉貫

好き嫌いがはっきりして生きていけば、割と楽なんですよ。

宇田川

そうですね。いやー本当…勉強になります(笑)。

仲山

僕も好き嫌いでいうと、数年前まではマーケティングの話をするにしても、「もも前」派にも「もも裏」派にも役に立つような抽象度でやってきたんですけど、ここ数年は「もも裏でいきましょう!」というふうに変えました。「もも前は専門じゃないので」と言って。初めて「もも前はダメです!」という本を作ったのが3年前です。

宇田川

じゃあ本を書くっていうのも…

倉貫・仲山

お。

宇田川

それも大事ですね。

倉貫

まずは締め切りなしで(笑)。

宇田川

僕も「もも前」はダメだと思うので、そういうのを僕の観点でちゃんと出すというのも大事ですよね。名刺になりますよね。

仲山

大事です大事です。

倉貫

宇田川先生が出すことの方が意味があるってのもあるんですよね。僕なんかがやってることを書いても、「まあそりゃそうだろ」ってなりがちで。

仲山

「うちには関係ない」「あてはまらないな」ってね。

倉貫

「ストーリーとしては面白いけどね」ってなっちゃう。

仲山

「こんな会社もあるのね」って言われて終わるけど…

倉貫

第三者視点みたいなところから…

仲山

抽象化された理論的なところで、もも前理論を真っ向から「ダメだ!」と言って…

宇田川

もも裏理論の本を出す!と。

倉貫

まずは漫画3作品読んでからこないとわからないですね(笑)。でもいいですね。自分の思想を本にして、立場とする。

宇田川

頑張らない程度に頑張ります。

一同

(笑)。

Z1A3010