リモートワークをもっと当たり前の社会にするために、「リモートワークは普通!」になっている会社を紹介していきます。今回は大興電子通信株式会社様に、コロナ禍でのリモートワーク導入やツールの使い分け、新人研修などについてお話をお聞きしました。
2020年のコロナ禍では、たくさんの企業がリモートワークを導入するに至りました。大興電子通信は、慣れない状況の中、実践することで社内の意識を変え、現在はリモートワークとオフィスワークを上手に使い分けながら、効率良く働くことができているそう。そのエピソードや仮想オフィスツール「Remotty」を上手に使ったリモートワークの方法などお話し頂いています。
東原 修とうはら おさむ
大興電子通信株式会社 マーケティング本部 マーケティング企画室 副室長
1998年入社。入社以来、中堅・中小企業のお客さまの事業拡大や業務課題に対して、ICTを利活用した解決策の提案営業に従事。2014年から社内の活動品質向上タスクフォースや、働く環境の整備タスクフォースに参画。2018年より現職。現部門では、営業部門の支援(見込み顧客開拓から案件創出)・ビジネス企画などを担務。
泉川 太いずみかわ ふとし
大興電子通信株式会社 SEイノベーション本部 デジタルテクノロジーグループ所属 シニアマネージャー
1990年入社。流通業担当SE、関西支店、九州支店を経て現部門に至る。大手サプライヤー向け自動車部品EDIシステム開発、流通卸向けシステム開発、小売りPoSシステム導入、生産管理システム導入などのプロジェクトにPMとして参加。デジタルビジネスの人材育成と普及に向けて現部門で活動中。
コロナ禍の影響でリモートワーク中心に
まず簡単に自己紹介と会社事業の紹介をお願いします。
東原大興電子通信株式会社マーケティング企画室の東原と申します。私ども大興電子通信は、「情報サービスを通して『価値あるしくみ』を創造することで社会の発展に貢献します。」という経営理念のもと、富士通のパートナーとして長年お客さまの事業拡大や業務課題の解決をサポートしてまいりました。私の部署では、営業支援部門としてプロモーション運営やパートナー協業企画を実行しています。
泉川デジタルテクノロジーグループの泉川と申します。グループのミッションとしては、デジタルビジネスを立ち上げるにあたっての人材の育成と、営業部門からお客さまへ発信できるような技術素材を作り上げることです。
かなり網羅的な業務展開ですね。
東原そうですね。私どもは、ネットワーク(音声・情報)などのインフラ環境の整備から始まり、工場の生産管理・店舗のPOSといった現場部門のシステムや、会計システムといったバックオフィスのシステムなど、日本全国の大手企業から中堅・中小企業に至るまで、業種・業務を問わず、ICTに関するあらゆるニーズにお応えしています。そんなわけでユーザーが20,000社あるんです。
大興電子通信株式会社 東原様
20,000社!すごいですね。
泉川その20,000社のお客さまが弊社の1番の強みですね。たくさんのお客様お客さまが我々を支えてくださっていて、我々がそこにサービスを提供できている、その繋がりです。本当に川上から川下まで全てを担うようにしていまして、それも自社のパッケージもあれば、他社のパッケージも、あるいはパートナー協業と柔軟に対応しています。
ワンストップで提供できるのは相当な強みですね。お客さまの立場からすると大興電子通信さんとだけ付き合えば安心、というところもありますし。
泉川ええ、そうです。長い付き合いのお客さまには「大興さんこういうことできない?」とご相談いただくことも非常に多いですね。もちろんマルチベンダーでやっているお客さまとのお付き合いもたくさんあります。
なるほど。ありがとうございます。今回のこのコロナ禍で、御社の事業に変化はありましたか?
東原大きな変化はやはり営業活動とお客さまへのサービス活動ですね。お客さま対応は訪問などの従来の形ではし辛くなりましたので、仕事のやり方自体が変わりましたね。社員が在宅になって、お客さまも在宅になって、今まで打ち合わせはお客さまの事務所なり私どもの事務所なりでやっていたのが、基本オンラインになりました。
泉川この情勢下でテレワークが通常になったのもそうですね。現在、会社からの指針としては50%程度(2020年12月現在)ですので、かなり多くの社員がテレワークと出社と両方使い分けてやっています。このテレワークによって生産性が落ちたかというと必ずしもそうではないですね。例えば、遠地のお客さま先で要件定義をする場合、移動だけで往復3~4時間かかることも。これがテレワークになったことによって時間が短縮できて、結果的に生産性が上がったというケースがあります。それに開発や設計をするエンジニアは、そもそも1人作業が多いのでテレワークでも特に違和感がないという印象です。
一方、マネジメントの観点からすると、パートナーさんや自社のエンジニアなど、バラバラの場所にいるメンバーのとりまとめや、進捗管理、品質管理が若干し辛いと感じています。従来なら常駐してもらっていたパートナーさんが在宅になった時にどうするんだとか、今までと違う観点での課題も出ていますね。
TOKYO2020へ向けてのトライアルが功を奏した
リモートワークのきっかけや、いつ頃から実施しているのかなど教えて頂けますか?
泉川最初は…3月だったかな、東原さん。
東原そうですね、リモートワークに関しては、昨年(2019年)に1度トライアルを実施していたんですよ。
泉川それはコロナ以前の話になるんですけどね。
うーんなるほど。
東原なぜかというと、当社の中期経営計画の中で、社員の働き方をどうしていくかを検討するタスクフォースがあって、会社の制度改革を始めていました。2020年にオリンピックが予定されていましたので、フレックス勤務・リモートワークのトライアル実施、サテライトオフィスの準備などを進めている中で、このコロナ禍ですね。トライアルした結果もあったので、4月の緊急事態宣言を受けてリモートワークを本格的に導入しました。
そしたら他の会社さんより準備自体は進められていたって感じだったんですね。
東原そうですね。幸か不幸か。
泉川ただ、その11月のトライアルに関しては、結構現場からは否定的な意見が多かったんです。そもそもトライアル自体が参加し辛かったというか…。それまでが本当に普通に事務所に集まって仕事をするスタイルが出来上がっていて、例えばマネージャーからすると「本当に仕事できるの?」とか、「なんでこないの?他の人は来てるよ?」という雰囲気がどうしてもあるんですよね。なのでトライアルを行ったものの、「リモートワークいいね」「使えるね」という意見にはあまりならなくて。
オフィスも明るく過ごしやすそうです。
赤裸々な…。
泉川本当の本音です。
東原経営層の一部でもそういう意見があったのは確かですね。
泉川経営もそうだしマネージャーもそうですね。マネージャーがそういう雰囲気なので、逆に若い人がやりにくくなっちゃう。本当はトライアルしたいんだけど、素直に言いにくい。「トライアルしまーす」って簡単にできる雰囲気にはなかなか持っていけなかったですね。
「やる気ないのか」って話になっちゃう。
泉川そうですね。「集まることこそ正」が拭えなかったんです。ただ2019年の12月、1月ぐらいから徐々に雲行きが怪しくなっていって、緊急事態宣言の前ぐらいから小学生以下のお子さんがいる社員はリモートワークが推奨されるようになりました。学校がお休みになっちゃいましたからね。それがどんどん他へも広がっていって、緊急事態宣言のあとはもうほぼリモート。今年の新入社員もいきなり新人研修がリモートでした。
新人研修は何人くらいでやられたんですか?
東原30人弱ですね。
30人弱の方が会社に来ることなく新人研修を受けられたんですか?
泉川本当はそうしたかったんですが、パソコンを支給するなどの対応がありましたので、最初の2日間だけ会社に来てもらいました。それ以降は全て在宅でしたね。研修自体は2ヶ月程です。今の大学生たちは、スマホもパソコンも当たり前に触っている世代なので、web会議ツールにしてもRemottyにしてもさらっとレクチャーしただけですんなり飲み込んでもらえました。序盤は少し慣れない部分もありましたが、研修中はもうほとんど普通にコミュニケーションできてましたね。むしろ講師の方が操作に戸惑ったりして(笑)。
離れ離れのままキックオフ。Remottyが関係構築に一役買った
ではそんな中、Remottyに興味を持った頂いたきっかけをお聞かせ願えますか?
東原そもそもは弊社の社長が出席したセミナーがきっかけですね。その内容が社内のSNSに投稿されて、興味を持ったメンバーが詳しく話聞いて…その上で私がソニックガーデンに直接アポイントを取ったという流れですね。自社でのリモートワークのためにもですが、商材のひとつとしてお客さまに提案できないかなとも思いまして。
なるほど。Remottyを実際に触ってみての印象はいかがでしたか?
泉川そうですね、機能的にRemottyがずば抜けて使いやすいとか、見たこともないツールだ!という衝撃があったわけではなく、「これもひとつの方法だな」と、冷静に検証するような気持ちで触り始めました。ただ、私のいる部署がこの4月に新設した部署だったんです。顔見知りの人もいましたけど、初めて一緒に仕事するメンバーもたくさんいて、なのにいきなり4月の段階でリモートワークが基本になってしまった。その時はもうコロナが猛威をふるっていて5割どころか原則在宅勤務だったので、部署が立ち上がってキックオフもないまま離れ離れに(笑)。
もともとSlackとweb会議がコミュニケーションの柱だったのですが、その2つだけでは埋まらない細かなニュアンスだとか、最初に組織が醸成していく上でのコミュニケーションの部分をなんとかしたいという思いがありました。僕がどんな人間でどんなことを求めているとか、彼らがどんな人間でどんな風に感じているのか、あとは反応の速さとか、そういうことをRemottyで埋めることができました。それは非常にありがたかったですね。今では在宅でRemottyがないと正直辛いとさえ感じます。
大興電子通信株式会社 泉川様
チーム立ち上がりの関係構築に役立ったんですね。
泉川はい。かなり。
嬉しいお言葉です。ありがとうございます。東原さんいかがですか?
東原Remottyの最大の特徴はやっぱり顔が見えるってことですよね。1番興味をそそられたのがそこでした。でもトライアルの時はそこまで良さがわからなかったんです。実際にリモートワークを始めるにあたって、目の前からメンバーがいなくなる不安を目の当たりにして初めてその効果を発揮してくれたと感じました。例えばweb会議したいな、と思ったタイミングでチャットを送る前にちょっと「何してるかな?」「パソコンの前にいるかな?」というのがわかる。それがすごくいいですね。
ツールを使い分けてより快適な環境を構築。新たな可能性も生まれた。
泉川さんの部署ではSlackやOfficeもあって、Remottyもあって…と使い分けして頂いているそうですが、具体的にどんな風に役割分担しているんでしょうか?
泉川基本、履歴を残さなきゃいけないようなものはSlackを使っています。例えば情報共有をしなきゃいけないとか、あとでフィードバックが欲しいような話題ですね。それに対してワンタイムで流すような連絡事項や、ちょっとした声かけ、小さな打ち合わせなど、履歴がいらないものはRemottyにします。RemottyはSlackと連携していますので、Remottyさえ立ち上げておけばSlackの通知も見られる。その辺も非常に便利に活用しています。極力電話を使わないようにしているんですよ。どうしても電話をするなら、Remottyの画像でどんな状況か見てから。でもそんなことするくらいなら、Remottyで声をかけてweb会議した方がすんなりいきますね。チャットでやりとりして、長くなりそうならweb会議に切り替えて軽く会話して、もっと大きくなりそうなら改めてスケジュール組んでちゃんと会議する、みたいに段階的に。
現在はオフィスに出社されているそうですが、常にRemottyはオンラインにしているんですか?
泉川オンラインにしています。
普段のRemottyの画面
東原そうですね。オンラインにしてますね。
泉川1人でも在宅の人がいれば必要なので。東原さんのところもつけっぱなしでしょ?
東原うちは全員つけっぱなしですよ。在宅だろうが出社してようが。課が2つあって、片方は基本在宅なんですが、もう片方は現場が多くて出社せざるを得ないことが多いんです。
そうすると離れている方に合わせた方が、情報格差も生まれませんし何よりコミュニケーションがスムーズですもんね。とても良い使い方をして頂いて嬉しい限りです。今後どのような方向に注力していくか、お考えはありますか?
泉川Remottyを商材として扱いつつ、それを補足するようなサービスを検討しています。リモートしていてパソコンの前にいるのがわかっていても、その人が今どういうステータスなのかがわからない、というところを解消したい。例えば受付に来訪者が来たとして、Remottyの画面に役員の位置情報とステータスが表示されている。それなら秘書が来訪者をつないでいいのかどうか瞬時に判断できますよね。そういうものをRemottyとAPIを含めて連携できるといいなと思っています。
それはすごくいいですね。実際にリモートワークしてRemottyを使っているからこそ出てくるアイディア。そうやってツールも働き方ももっと便利に発展していける可能性があるのは嬉しいですね。本日はどうもありがとうございました。
取材後記
2020年はどの企業にとっても難しい決断がありました。そんな中で事業を良い形で継続させるための努力や試行錯誤がよく伝わる、大変興味深いお話でした。
ますますのご発展をお祈りいたします!
(リモートワークラボ編集部)
Remote Work Laboではリモートワークを行なっている企業の記事を作成しています。
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この記事を書いた人
土佐光見
リモートワーク研究所研究員・ライター。
webショップの企画運営、web制作、ディスクリプションライティングを経験し、フリーランスに。リモートで働く二児の母。趣味は読書、観劇、俳句。