「みんなで楽しく働きやすく」が「やさしい循環」を生み出す〜株式会社JAMSTORE(前編)

リモートワークをもっと当たり前の社会にするために、「リモートワークは普通!」になっている会社を紹介していきます。今回は、クリエイティブバックオフィス「Re:motto」や日用品雑貨のプロデュースなどを手がける、株式会社JAMSTORE様にお話を伺いました!
 
その企業理念は「やさしい循環をビジネスに」。「属人的」な働き方を掲げ、働く場所も時間も、働く人が自由に選べるようにしているそう。「スキルはあるけどフルタイムで働けない」従業員たちがお互いを助けあいながら柔軟に働いています。そのワークスタイルに変化したきっかけや、働き方への思いをお話ししてくださいました。

松本 裕美

松本 裕美まつもと ひろみ

株式会社JAMSTORE 執行役員
リクルートグループにて、求人広告や結婚情報誌のライティング・ディレクター業務を経て、2009年独立。情報誌制作のほか、企業の広報ツールなどの制作を軸に、コピーライティング、インタビュー、クリエイティブディレクションまで幅広く手がける。2013年、パートナーを代表に迎えて法人化。現在5期目となる株式会社JAMSTOREの執行役員を務める。元ロングワーカー、41歳での高齢出産、という経験からうまれた企業理念は「やさしい循環をビジネスに」。働く人、企業、そして周囲の人にやさしい商品・サービスを展開中の同社では、スタッフ全員が時短勤務・リモートワーカー、9割が子育て中の主婦。
1児の母。関西大学経済学部経済学科卒。
三島 りか

三島 りかみしま りか

株式会社JAMSTORE 広報
私立大学職員を経て、サービス業界へ転職。人材管理やマネジメントを担当し、結婚を機に退社。出産後、子育てしながらもキャリアを積みたいと思い、在宅勤務にてマネジメントならびに広報として仕事を再開。働き方や理念に共感し2017年株式会社JAMSTOREに入社。広報担当として日々奮闘中。1児の母。

「やさしさ」を理念に

では、まず会社の事業内容を簡単に教えてください。

松本

広告制作を主に手掛けています。DTPを中心に、ウェブ制作も手掛けておりまして、2016年からは、クリエイティブの業務をメインにしましたバックオフィスサービス「Re:motto」を展開しておりまして、弊社のデザイナーやライターなどが、お客さまのクリエイティブ業務のバックオフィスをお手伝いさせていただいております。

それは依頼ごとにデザインやライティングの業務を行うサービスですか?

松本

そうですね。分かりやすく言うと、パンフレット制作やフライヤー制作という、いわゆるデザイン事務所が受ける仕事より、例えば営業の方や、企画をされるプロデューサーの方が使う企画書や、お客さまにアイデアを提案する資料の制作が多いですね。「企画したアイデアを、相手に伝わるプレゼン資料としてキレイにまとめて欲しい」というオーダーが多くなっています。もちろんチラシ制作などもありますね。

じゃあ、単発で受けるというよりは、企業様ごとの担当を配置して、ずっとバックオフィススタッフとしてサポートするということなんですね。

松本

そうです。月額固定料金で承っております。

JAMSTORE

なるほど。働いてる方は皆さんリモートワーカーとお聞きしました。

松本

はい。基本的にはみんなリモートワーカーで、自宅勤務の方がほとんどです。でも事務所には子どもを連れてきてもOKなので、気分転換だったり、保育園がお休みだったり、それぞれの事情に合わせて出社してもらっています。働く場所を限定していませんので、事務所が良いなら事務所で、家が良ければ家で、という感じで。

なるほど。御社のミッションに「『やさしい循環』をビジネスに」とありますね。「働く人にやさしい」という会社の内側に対しての意味と、「周りにやさしい」という対外的な意味でオーガニックな商品を扱ったり。

「Re:motto」も「企業にやさしい」というコンセプトでいらっしゃる。この「やさしさ」というキーワードを中心にしているは、会社が立ち上がった頃からの思想ですか?

松本

いや、そうでもなくて(笑)。

(笑)

松本

と言ったら、従業員に怒られるかもしれないんですけど、途中で変わった、むしろ「気付いた」と言った方が正しいかもしれないです。

それはいつ頃ですか?

松本

2013年が弊社の1期目になるんですけど、今思えばその時はどちらかというと、あんまり従業員の方は見てなかったという気はします。

と、いいますと?

松本

そうですね。顧客満足は当然ながら意識してました。

ただ、その顧客満足のために、「若い頃はロングワークをしてスキルを積むんだ」くらいの意識で働いていた、そんな気がします。スタッフには自分が持つスキルをガンガン伝えて、どしどししごいて(笑)、みんなでがむしゃらに仕事する…そんな感じで。しかも当時の私は超ロングワーカー。スタッフはしんどかったと思いますよ。

自らの人生の転機に、会社全体の働き方も作り変えた

その思想が変わったきっかけは、ご自分の状況の変化ですか?

松本

出産で自分がロングワークできなくなったことがひとつのきっかけですね。もう妊娠中から、「これは10カ月後にはロングワークができなくなるぞ」と。

そうですね。

松本

ロングワークができなくなるということは、今の事業、ビジネスモデル自体が崩れてしまう。じゃあ売上をどうやって立てるんだ?と。しかも妊娠中に、当時いた従業員が続々と辞めていった。「あぁ、自分が楽しいと思っていた仕事は、従業員には共有できていなかったんだな」と、強く思いました。たぶん従業員の方も、「松本さんが妊娠するということは、この会社は事業として成り立たなくなるな」というのを薄々感じてたんだと思うんですよね。「ここにいてもやばい。そもそもこの仕事の面白さを感じられない」と。

すごく冷静ですね。

松本

(笑)。「じゃあ、みんなが楽しい、面白いと思うことは何だろう」とか、「自分がお客さんにどうやって価値を返せるのかな」ということを考え出しました。自分の出産と従業員の退職がほぼ同時のきっかけでしたね。

自分の働き方も大きく変わってしまうことをきっかけに、みんなで楽しく働ききたい…。そんな思いからリモートワークを選択されたんですか?

松本

そうですね。ただ、私が目線を向けていた【みんな】というのは、「スキルや経験のある人」です。私のように実務経験はあるけど、いまは長時間働けない、とかいうそんな人が働きたい職場、嬉しい環境はどんなカタチなのかを考えた。彼らがどうやったら一緒に働いてくれるのかな、と考えたんです。我々のような零細企業が「経験者、来てください!」と言ったところで、とりたてて高いお給料を設定できるわけでもないですし。妊娠中だったり、もしくは子どもがいて、「キャリアは積んだけど、いまは家にいたい」とか、「保育園に預けて時短勤務をしたい」とか、腕はあるけど今はフルタイムでできない、そういう人が働きやすい場所を作ったら、お客さんにも質のいいサービスをそのまま維持できるのかなっていう、そんな発想です。

働きやすさを求めて、会社をブランディングし直したんですね。

JAMSTORE

松本

その辺りは弊社のwebサイトでもぶっちゃけて書いてしまっています。「ロングワーカーでした。なので、変えました」(笑)。

今の状況に1番良いことを選択して行く

リモートワークを導入するに至ったきっかけは、ご自身の妊娠がきっかけと、先ほどもおっしゃっていました。いったんおひとりになってから、新たに求人募集をかけたんですか?

松本

若干かぶってますが、ほぼ同時期に入れ替わっています。

最初はどのように仕組みを作っていったんですか?

松本

もともと私はフリーランスでずっと仕事をしていて、それを法人化したんです。自分が今まで使っていたツールや手法を共有するぐらいだったんですけど、だんだん人数が増えてくると、ひとりで仕事をしてた時のツールじゃ足りなくなってきたので、新たに導入していったっていう感じですかね。

例えば、クラウドで給与計算もしたり、タイムカード付けたり。複数名でできるだけ情報共有しながら勤務できる体制を徐々に入れていきました。

雇用形態はどのようになっているんですか?

松本

基本的に、9時から17時までフルタイムで働ける人がいないので、短時間正社員の方と、その他はアルバイトという形で時給計算をしています。

なるほど。確かに働ける時間にずれがあると、そのほうが分かりやすいですね。

松本

そうなんです。皆さん子育て中だとどうしても業務を中断することが多くなるので、結局時給にしたほうがシンプルでお互いにノンストレスなんです。

すごく合理的ですね。「フルタイムで働けない」ということで、現在従業員は子持ち主婦の方が多いんですよね?

松本

ほぼそうです。「子連れ勤務可」と記載はしていましたし、やっぱり状況的にそうなるんでしょうね。ですが「現在フルタイムで働けない」というのは何も子育てだけに限定したことではないと思うんです。介護でも持病でも、理由は重要ではなくて、スキルがあってうちの会社の働き方や理念に共感してくれる方であれば。

そうですね、今いるメンバーも、長く働いていけば当然ライフステージも変わっていきますもんね。

松本

その中でまた会社に求められる制度も変わっていくでしょうし、都度働きやすく変えていければと。

後編に続く

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この記事を書いた人

土佐光見

リモートワーク研究所研究員・ライター。 webショップの企画運営、web制作、ディスクリプションライティングを経験し、フリーランスに。リモートで働く二児の母。趣味は読書、観劇、俳句。