全体最適を考えたら、リモートワークは有効な手段になった〜アクトインディ株式会社(前編)

リモートワークをもっと当たり前の社会にするために、「リモートワークは普通!」になっている会社を紹介していきます。今回は、子育て世代に特化したお出かけ情報サイト「いこーよ」を運営する、アクトインディ株式会社さんのお話しを伺いました!

子育て中の社員が約7割というアクトインディさん。多様なライフスタイルの社員たちがいかに働きやすく、お互いに過ごしやすいかを追求しながら、制度や文化を構築しているそう。その過程やまさに子育て真っ最中の社員の働き方、組織のあり方などをお話しくださいました。


村下 優美

村下 優美むらした ゆうみ

アクトインディ株式会社 管理部
大学卒業後、アクトインディに入社。シニアマーケテイング事業部を経て2015年より管理部に異動し、総務や労務を主に担当して現在に至る(2019年5月時点)。
石原 智

石原 智いしはら さとし

アクトインディ株式会社 広報室
2017年9月にアクトインディに入社。コーポレートPRからサービス及びイベントPRまで担当。(2019年3月時点)
有馬 巳姫

有馬 巳姫ありま みき

アクトインディ株式会社 子育て支援事業部 編集チーム
大学卒業後すぐに長女を出産し育児中心の生活を送るも、子育ての経験を活かした仕事がしたいとアクトインディへ入社。現在は親子向けイベントを紹介するニュース記事を中心に、子育てやおでかけに関する情報を日々配信中。プライベートでは3歳男子と5歳女子のママ。

「みんなが働きやすい環境作り」の一環としてのリモートワーク

「いこーよ」という、子育て世代に特化したおでかけ情報サイトを運営していらっしゃるそうですね。

村下

そうですね。今はメインが「いこーよ」なんですが、管理部と広報と、あとは子育て支援事業部といった部門に分かれて、その中でまたチームを細かく分けて組織体制を整えております。

我が家にも6歳と4歳の兄弟がいるんですが、「いこーよ」はよく拝見しています。「なんか子連れで行けるとこないか」って検索すると大体最初に出てきますよね。

子どもとのおでかけ情報に特化した情報サイト「いこーよ」
石原

そうですね。子育て層の8割、9割に使って頂いているという認識です。SEOも力を入れてますので、「子ども」「遊び」関連のキーワードを入れると上位に来るようには。ただ、「いこーよ」っていうサイト名自体で検索されるのは実はそんなに多くないというのが我々の課題ですね。

村下

そうですね(笑)

石原

そういう子育て層向けのサービスをやってるということもあって、社員の7割程が小学生以下の子どもがいるお父さんお母さんです。そうなると自然と子育て世代が働きやすい環境を整える方向になりまして、リモートワークはこの一環ですね。

はい。

石原

「いこーよ」は今年で11年目。これからもっと色んな形で展開していく予定です。それに合わせて社員もまたどんどん増えてきています。多様な人が働きやすいようにということで制度もいろいろ工夫してるところですね。

人が増えていけばいくほど、自然といろんなものに対応しないといけなくなりますね。

まずは「act」。そこから制度を成熟させていく

最初は葬儀関連の会社だったとお伺いしました。現在の子育て事業に移行ししたのはいつ頃ですか?

村下

サービス自体は2008年に「いこーよ」をスタートしてるんですけれども、実際に「いこーよ」に本格的に舵を切ったのは2013年頃ですね。

今現在、全体で何人いらっしゃるんですか?

村下

今現在でパートも正社員も含めて95人です。2012年に初めて「いこーよ」の営業担当を専属で採用して、そこから試行錯誤をしてここまできました。

なるほど。リモートワークが盛んだというお話なんですけど、それは最初からですか?導入されたきっかけっていうのはありますか?

村下

制度として導入したのは2016年ですね。実際に使い始めたはその前、2012年頃ですね。エンジニアの1人が、自宅でも業務ができたほうが効率がいいのではないかと提案しまして、社名に「act」とある以上はまず実行しようと。

なるほど。

村下

実践してみたら、エンジニアという業務特性もありますけれども、出社するよりも自宅で作業したほうが生産性が上がったと検証できたので、そこから次々手が上がりました。以降は希望する人間がいればその都度対応して使う、というやり方でしばらく。でも、やっぱり人が増えますと制度化する必要が。

そうですね。めちゃくちゃになっちゃいますもんね。

村下

そうなんですよ。マネジメントも難しくなってきたので、きちんと明文化して制度としての目的も入れて作りましょうということになって、2016年の7月に制度化して全社に周知しました。

実験的に導入して、みんなの希望に合わせて制度が成熟していったんですね。

村下

そうです。実践した方々もそれで成果を出しているので、会社としても安心して制度化できました。

最初に手を挙げた方は勇気がいったんじゃないですか?普通の会社なら口火を切るのは難しいですよね。

村下

その頃がまだ12~13人ぐらいの規模感だったんですよ。まだオフィスも本当に狭くて。会社としても、上下役職関係なく、目的に対しての意見を積極的に言う風土があったので…。

そもそも発言しやすい雰囲気なんですね。

ルールはシンプルに。あとは「全体最適を考えて」行動する風土

今、基本的に出社せずに自宅でリモートしている方っていらっしゃるんですか?

村下

パート社員に1人。通勤時間がかかるのと、お迎えの関係で。月に1~2回、交流ランチの機会を設けているので、そのタイミングだったり、全社会議の時には出社してもらって、それ以外は基本的にリモートで業務をこなしています。

なるほど。今、リモートワークは皆さんどんなふうに使ってらっしゃるんですか?人によってかなり違いますか?

村下

人によって違いますね。パートも正社員も含めて大体85%ぐらいの人間が利用経験があるんですけど、毎日ですと大体10%ぐらいですね、リモートしているのは。週2~3回リモートと出社を変えてる方もいますし、有馬さんみたいに1日の決まった時間帯はリモートをして、日中は出社するという人もいます。

本当にバラバラなんですね。有馬さんは完全に1日リモートという日もありますか?

有馬

あります。一応今は週3回出社で、週に2日は完全に自宅で仕事しているんですけど、やっぱりメディアの性質上、子どもとお出かけする季節の直前はすごく記事の本数が増えますので、通勤時間分も記事制作に充てたくなるんです。そういう風に作業効率を優先して切り替えてやってますね。

それは都度申請なんですか?それともグループウェアで「今日は行きません」でもうOK?

村下

運用ルールとしてはマネジャーの承認が必要なので、都度申請というようなルールになってますね。

毎日?

村下

基本的には。

今、リモートとオフィスに来てる人の割合は、チームによって全く違いますか?

村下

そうですね。例えばですけども、経理だったり、私のように総務系の管理部門はやっぱり出社したほうが業務が進むので、リモートの割合は少なくなりますし、一方で編集部や制作陣に関しては、ばらつきがありますね。時期にもよります。

やってることによっても違いますもんね。

村下

人にもよりますね。自宅よりも会社に来たほうが集中できるという人も多いです。本当にバラバラですね。

それでも成り立つっていうのはいいですね。どうしても大きな会社でルールを作ってやろうとすると、柔軟性を持たせるのが難しくなったりするので、それがこの人数で維持できてるのはすごいと思います。

村下

ルールが少ないといいますか、規定に定めてるものはなるべくシンプルにしてるところはありますね。ルール自体が使いにくかったら本末転倒なので。

なるほど。

村下

ルールをシンプルにしているのと、あと「全体最適を考えて行動しよう」というのは常々言っています。例えば営業系のメンバーが全員リモートすると電話に誰も出られなくなるので…。

確かに。最もな。

村下

過去にあったので。人にもよりますね。自宅よりも会社に来たほうが集中できるという人も多いです。本当にバラバラですね。

一同

(笑)

村下

そういうところをよくよく考えて。自分のことだけではなくて、全体が回るか、という視点も持って運用していきましょうという風土が根付いているので、相談しながらチーム内で上手にやっています。

信頼と感謝を大切に、組織を育んできた

コミュニケーションはどうやって取られてるんですか?来る日と来ない日があって、人によっても時期によっても違うとなると。

村下

うちの部門(管理部)は本当に突発的で(笑)。

一同

(笑)

村下

「子どもが熱を出して、2時間だけだったら作業できます」みたいな感じなので。

でも実際そういうこと、ありますもんね。

村下

そういった突発的な相談が来るので。会社でやらなきゃいけないことをまず引き継いで、リモートでやる作業を申告して、とその場で整理していきますね。それでちゃんと回っています。そういった突発的なリモートが発生しそうな方は、もし発生しても大丈夫なようにスケジューリングしてらっしゃるので、信頼して仕事ができる状況です。

編集部の方はどうですか?

有馬

編集の場合はもっと個人個人で記事の担当が分かれているので、お互いに仕事を都合し合うことはあんまりないんですけど、その分、記事の中の細かいやり取りだとか、認識をすり合わせたりするのは、会議のときにいなければ都度ハングアウトでつないで話しますね。文字コミュニケーションでは難しいというところはハングアウトですが、基本的にはSlackが中心です。社内にいないときはSlackで細かくやり取りするように気を付けてます。

全体の運用としては、オフィスもリモートもウェブ上のタイムカードを使って労働時間の管理をして、コミュニケーションはSlackと、適宜テレビ会議を使う感じですね。

村下

そうですね。

web上のコミュニケーションでは、時差が生じたり、顔が見られないと良くわからない、などが必ず持ち上がる問題なんですけど、そのあたりのことで何か気を付けてることはありますか?

村下

ポップアップが何度も出てきてうるさい、なんて問題もかつてはありましたので、チーム内で最適なコミュニケーションを模索してやってくださいと。あとはSlackは必ずオンにして、常時繋がっている状態にはしておいてくださいっていうのは共通ですね。

なるほど。

村下

自宅勤務は、フレックスっていう特徴もあるんですけれども、開始と休憩時間と終業は通知を必ずSlackで入れてもらうようにしています。時間がバラバラなので。業務からちょっと外れるときにはそれが分かるようにする、というのもありますね。会社にいるメンバーも何か連絡を取るときにはそれを確認してコミュニケーションを取る。お互いに気を付けましょうみたいなレベルなんですけれども。

結局は信頼関係ですね。それをちゃんとやってくれるメンバーだから動いてる。

村下

そうですね。文字だけのコミュニケーションで、ロスが生まれた場合にはビデオ通話などでフェイスtoフェイスの機会を作って解消したり…。何かと建設的にやりましょうというスタンスではありますね。

離れているとその分コミュニケーションに気を使うようになりますよね。

村下

そこはありますね。代表の下元も「お互いさま、おかげさま」っていう言葉をよく使うんです。「相手の立場に立って考えよう」というのが風土としてもあるので、そこでわりと工夫できてるのかなとは思います。

それもずっと蓄積してきて、なんとなくできてきた文化ですか?

村下

ええ。人が増え始めた頃に、コミュニケーションロスや、「ずっとSlackの対応をしていて業務ができない」というような声が上がったこともありました。「あの人が来てないのに自分は出社して…」というのもありましたね。

ああ、やっぱりそういう意見も一度は出るんですね。

村下

そんな中で、自宅勤務制度はそもそも、「生産性を上げて、みんなで価値あるサービスを作るための手段である」という認識のすり合わせをして、じゃあより良いものにするにはどうすればいいかという話し合いもしました。今のメンバーが制度も付随するコミュニケーションの形や考え方についてもブラッシュアップさせて、次に入社してくる人たちにその環境を提供できるようにならなければなりませんし。

そのあたりもあくまで建設的に。

村下

そうやってみんなで構築してきたものですから、やっぱり環境に感謝するというスタンスも社員の中では強いですね。だから例えば家族の用事で突発的に休んだ人が、日報に感謝のコメントを残したり、それを見てみんなお互いにもっと働き方をよくしていこうっていう意識を高めたり。生活の中のちょっとした意識付けも大きいのではないかと。

会社のwebサイトにあった理念の中には、「謙虚さと感謝」というのが入ってますよね。

村下

そうですね。増えてきたとはいえ、まだ小さな組織なので、気になることがあったり、問題が起きたときにマネジャーに相談しやすいというのも重要だと思います。

わりとフラットな雰囲気なんですね。やっぱり細かく言葉を残すとか、思ったことをすぐ言うというのはどうしても必要ですね。

村下

そういう意味だと、わりと思ったことをアウトプットするのは早い組織だと思います。

ルールをシンプルにすればシンプルにするほど、隙間の解釈がぐずぐずになってしまうのが常だと思うんですけど、そこの意識がきちんと統一されてるのが御社の強みのように感じます。ちゃんと理念が浸透していないと組織として成り立たなくなりますし。

後半はこちら

この記事を書いた人

土佐光見

リモートワーク研究所研究員・ライター。 webショップの企画運営、web制作、ディスクリプションライティングを経験し、フリーランスに。リモートで働く二児の母。趣味は読書、観劇、俳句。