【リモートワークの働きすぎ問題を克服した「アフターセブン断り放題」】前編〜株式会社ポップインサイト

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「チームで働くリモートワーカー」を応援する【リモートワークラボ】がお届けするインタビュー企画。
この企画では、リモートワークを推奨している企業の社長やリモートワーカーに、リモートワークを取り入れている理由、チームが機能する仕組みをお話いただきます。

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池田 朋弘いけだ ともひろ

株式会社ポップインサイト代表取締役社長
2008年、早稲田大学卒業。大学時代は、もっとネクスト株式会社に創業メンバーとして参画。CTOとしてCMSサービス開発に従事。
2008年4月、Webユーザビリティのコンサルティングファーム(株式会社ビービット)に入社。ユーザビリティコンサルタントとしてネット大手ベンチャーなど多数のプロジェクトに従事し、「中古車一括査定の申込数1.5倍」等、多くの実績を出す。延べ300人以上のユーザビリティテストを実施。


 

ユーザ視点のウェブ戦略を社会に普及させたい

どのような事業をされているのか教えていただけますか?

池田

「リモート形式のウェブユーザテスト」を主な業務としています。ユーザテストとは「ユーザが何かを利用している様子を実際に見て、商品の問題や改善すべき点を見つける」ための調査です。

具体的にはどのような形でサービスを提供されているのですか?

池田

弊社が全国に抱えるモニタさんにいろんな商品、ウェブサイトを利用してもらい、その利用の様子を録画してもらいます。その動画を必要に応じて分析、加工し、お客様に商品としてお渡ししています。お客様は弊社の商品(調査結果)を活用することで、ユーザ視点の手掛かりを手に入れ、マーケティングやサービス品質の改善につなげることができるのです。

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なるほど。ウェブユーザテストの事業を始められたきっかけは何だったのですか?

池田

前職の「beBit」でユーザ視点を適切に取り入れたウェブ戦略の強みを体感しましたことがきっかけですね。

もう少し具体的にお聞かせいただけますか?

池田

当時新卒1−2年目だったのですが、ユーザ視点を積極的に取り入れることによって、ウェブサイトのコンバージョンは大きく改善しました。ユーザ視点をしっかり押さえて、やるべきことをやれば、それほど厚い経験がなくても成果は出せるのではないか、そういう直感がありました。そこで、その際の武器である「ユーザ視点を意識したウェブ戦略をもっと手軽なものとして世に普及させたい」という思いのもと、起業することにしたのです。

 

全社員がリモートワークでオフィスレスの体制

現在はどういう体制で事業をされているのですか?

池田

社員は7名で、学生インターン、アルバイト増減ありますが、常時約10名程度の体制です。社員は開発、営業、調査運用といった役割がありますね。

リモートワークをされている方はどのくらいいらっしゃいますか?

池田

全員が完全にリモートワーク体制で勤務していますね。

全員ですか?

池田

はい、作業イメージですが、全体として10時始業、19時終業を定時としており、その時間内で各自作業をやってもらってます。

お客様とのやりとりもリモートでされているのですか?

池田

はい。最初のアポイントメントから相談フェイズでの調整まで全てリモートで行っています。お客様先等に訪問、移動するコストを可能な限り削減するために、Skype会議を積極的に活用しています。

徹底されてますね。メリットは何でしょう?

池田

会社サイドと従業員サイドの両方にメリットがあります。会社サイドでは、まず何より固定費の削減です。オフィスがなければ賃料だけでなく、光熱費、水道費、通信費などのインフラにコストをかける必要がなくなります。もちろん従業員の交通手当も減ります。その分、給与であったり、新規事業であったりと前向きな用途で資金を使えるようになります。

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なるほど。固定費は当たり前のように思っていましたが、確かにそうですね。

池田

従業員サイドでは、シンプルに『仕事のある生活全体が楽になる』ことがメリットです。ある研究(http://www.bsfrey.ch/articles/C_481_08.pdf pp.355)によると「22分の通勤の苦痛を相殺するには月470ユーロの給与アップが必要」らしいのですが、具体的な数字はさておき、通勤は冷静に考えれば非常に苦痛だということは多分多くの勤め人の方に賛同いただけると思うんですよ。もしその通勤をカットできるのであれば、それは非常に有力な福利厚生になるはずだと考えています。

 

意外なきっかけからリモートワークの可能性が見えた

現在は全社員がリモートワークで、オフィスも持たない体制ということですが、起業当初からそうだったのですか?

池田

いえいえ、当初は渋谷の桜が丘辺りにオフィスを構えていたんですが、普通に週5勤務でしたよ。きっかけは、2013年のある段階であるメンバーを引き入れたんですが、彼は当時中国から帰ってきたばかりで、どうも目線が海外を向いていると。ことあるたびに「どこか海外いきたいですねー」とかいうわけです。

海外好きな方なのですね。

池田

で、それを聞いているうちに「別に行かせた先で仕事してもらえばいいじゃん」「それでやる気になってもらえるなら安い」と思い始めて、まあ小回りの利く会社でもあるので「いいよ、一回行っておいでよ。向こうで普段通り仕事してみてよ」と。そんな感じでリモート化が始まりました。

「いいじゃん」って発想すごいですね!実際にリモートワーク試してみてどうでしたか?

池田

やってみて、我々の業務が「ほぼインターネットで完結できる内容」であることに気付いたんですね。よくよく考えてみると、弊社のモニタさんは全国に散らばっており、そもそもインターネットを介したやり取りがベースで、地理的な制約を受けません。商品も「データ」なので、販売、納品は基本的にオンラインで完結します。「あれ、僕らがオフィスに出勤するを望んでいる人って、社外にはそんなにいないのでは?」と。そういう気づきがあって、リモートワーク化が進んだように思います。

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なるほど、やってみると改めてリモートワークとの相性の良さに気づかれたということですね。その他に気づいたことはありますか?

池田

当然ですけど、最初は『自分たちのため』だったんですよね。朝家族と一緒にいられてうれしいよね、とか、通勤時間削減できて楽だよねとか、無くてもいいけどある「ベター」なものとしてとらえていました。ただ、そうやって実際に恩恵を受けているメンバーを見ているうちに、「これって、いろんな事情で家から離れられない、でも働かないといけない人にとっては死活問題を解決するカギになるんじゃないか」って思えてきたんですね。

視野が広がってきたということでしょうか?

池田

そうですね。「ベター」なだけでなくて、それが「マスト」なケースもあるのではないかなと。であれば、その機会はできるだけ多くの「リモートワークがマスト」な人に開いていくべきだと考えました。結果、2014年にはシングルで子育てされている女性を採用して、現在も中核メンバーとして完全リモートで頑張ってもらっています。この流れはどんどん推し進めていきたいと思っていますね。

 

リモートワークでは無理をしすぎる方が問題

実際にリモートワークをするメンバーがいるようになって、他のメンバーはどういう反応でしたか?

池田

もちろん最初は恐る恐るでしたね。創業から日が浅い状況でしたが、まずはその中でも熟練度の高いメンバー限定でスモールスタートしました。

スモールスタートの効果はどうでしたか?

池田

気づきがたくさんありましたね。教えてもらう、教える側の双方に負荷が大きくて、未経験の業務をいきなり一人でやるのは大変だったり。

なるほど。

池田

文字でのコミュニケーションだとネガティブ内容がより強く響いて、ミスを文字通り一人で抱えて考えてしまうということもありますね。業務でエラーを出したときなど、気分が落ちているときは本当に元気がなくなる。

落ち込み具合が見えにくいのですね。

池田

そうですね。あとは、ベッドサイドでも業務ができるので、休む判断がつけづらく、体調不良のときも無理をしてしまったり。

いろいろ課題が出てきましたね。

池田

ただ、こういった気づきを得つつも「意外といけるのでは?」という手ごたえはありました。会社として「相互のライフスタイルを尊重しよう」と呼びかけてきたのが風土として定着しつつあったし、リモートのメンバーであっても働きぶりで劣ることがなかったので。運もあったかと思いますが、「なんであいつだけ」という風にはなりませんでした。

スモールスタートからどのように拡大に至ったのですか?

池田

その後、しばらくして「これは全社的に制度化しても問題ない」と判断を下してからは、1つ1つ課題解決に取り組みました。例えば、教育コストの問題には、基本的な業務を習得し終えるまでは単独リモートワークはしない、もしくはリモートワークの割合を下げて教育担当の先輩とできるだけ物理的に一緒にいるようにするようにしました。ネガティブなやり取りについては文字だときつくなるので、できるだけ音声通話で行うよう呼びかけました。

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働きすぎ問題はどうですか?

池田

体調が悪いのに普通に仕事をしているように見えて、仕事をを抱えてしまう。こういう事態が起こりにくくするため、まず休暇を取りやすい雰囲気を意識的に作るようにしました。

うまくいきましたか?

池田

いや、これが結構難しかったんですよ。「休んでいいよ」「有給取って」って促しはしていたんですが、みんなまじめなので、言うだけでは休みを取ってくれないんですよね。誰も休まないと、望む望まざるにかかわらず、自ずと「休みづらい」雰囲気はできてしまいます。これは困ったなと。

確かに、声をかけるだけでは難しそうですね。

池田

そこで「まず隗より始めよ」方式に切り替えました。ある飛び石連休を利用して、社長である僕自身が「この連休は家族とゆっくり過ごすので、連休の谷間は休みます」とまずはっきり言ったんですよね。続けて、「皆さんも業務に支障がなければぜひ休んでください」と促したら、ようやくほぼ全員が休んでくれた(笑)。

「じゃあ私も」みたいな(笑)。

池田

そして、2016年4月から有給休暇の取得義務付けがはじまりました。経営者としては珍しい受け取り方かもしれないですが、社員に有休をとる「口実」を与えてくれるこの義務化は、ポップインサイトとしてはとてもウェルカムだと思っています。

 

自分の時間を大切にする「アフターセブン断り放題」

他にもユニークな取り組みをされているそうですが、教えていただけますか?

池田

いろいろやっているのですが、特にユニークかなと思っているのは「アフターセブン断り放題」制度ですね。変な名前ですが、要するに「定時に以降の時間帯の催し物は、原則として『参加は完全に自由』である」ということを明文化したものです。

断り放題、なかなかユニークですね。

池田

普段からリモートワークなのだから、たまには強制参加でもいいじゃないかと思われる方もいらっしゃるのですが、弊社では逆だと考えています。やってみるとわかるのですが、リモートワークはそもそも公私混同を招きやすい側面があります。

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家にいるとプライベートを充実させやすいイメージがあったりしますが、そうではないのですね。

池田

よくよく考えてみると、「家」という、ときには家族がそばをうろうろしているような私的な空間で、公的な位置づけともいえる仕事をしている状態なんですね。ですから、意識してないと境界線がどんどんあいまいになりやすい。無制限に「私」の空間を侵食しうる危険性が潜んでいるとも考えられるわけです。

リモートワークの方が仕事優先な状況になってしまいやすいと。

池田

そうなんです。もともと「自分の時間も大切にしてもらいたい」という思いもあって始めているリモートワークにもかかわらず、そのようになっては本末転倒だと思っていて「あっちはあっち、こっちはこっち」の考え方を根付かせていこうと心がけています。その一つの表れが「アフターセブン断り放題」です。定時7時以降は「自分がやりたいことをやりなさい」ということですね。

 

【「会う」ことを非日常のイベントに。リモートのチームで一体感を生む方法】

(後編はこちら)

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