家の外で怪我をしたらどうする?〜在宅勤務中の労災〜

在宅勤務中の怪我、労災は認められる?

在宅勤務中に怪我をした場合、労災は認められるのでしょうか?

結論から言うと、在宅勤務であっても、会社で雇用した労働者である以上、オフィスに出社している社員と同様に労働者災害補償保険法の適用を受け、保険給付を受けることができます。今回はこの「在宅勤務者の労災認定」について解説します。

労災とは

「労災」とは「労働保険制度」の略称です。仕事が原因で怪我や病気をした時、治療費や治療のために仕事を休んでいる期間の生活保障、後遺症が残った場合や死亡した場合の家族の生活保障が目的とされるもの。言わば働く人たちの生命・身体を守るための保険です。

会社に所蔵する労働者であれば、どんな就業形態であれ、労災を受けることができますが、そのためには、その怪我や病気が仕事を原因ととすることが証明されないといけません

通勤災害と業務災害

保険給付は大きく分けて「業務災害」「通勤災害」の2つに適用されます。

業務災害とは、労働者が業務を原因として負傷したり、疾病を得たりした場合、その結果死亡に至った場合を指します。業務災害と認められるためには、業務とこの傷病との間に一定の因果関係があることが必要ですので、労働者が私的行為や、業務を逸脱する恣意的行為を行った結果の傷病は、基本的に業務災害とは認められません。

通勤災害とは、労働者が就業のために、住居と就業場所の往復等を合理的な経路及び方法で行う際に得た傷病を指します。モバイルワークやサテライトオフィスでは、通勤災害が認められる場合も考えられますが、例えば在宅勤務者が私的な理由での移動中に得た傷病の場合はこの通勤災害の範囲には入らないことになります。しかし作業場(自宅)内や作業するためにネットカフェに移動中に得た傷病の場合は、通勤災害として認められた事例もあります。個別の判断については所轄の労働基準監督署の指示を仰ぎましょう。

在宅勤務時の労災認定の範囲は?

2004年、厚生労働省は、「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入および実施のためのガイドライン」を発表しました。その中で在宅勤務者であっても、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働基準関係法令が適用されることが明記されています。

ここで重要なのは、業務が原因である災害については、業務上の災害として保険給付の対象となりますが、自宅における私的行為が原因であるものは業務上の災害にはなり得ないということです。

自宅での事故が労災の対象となるには、以下の要件を満たす必要があります。
①会社に勤めている労働者であること
②自宅で傷病にあった際、会社の指揮命令による業務中であること
③傷病が業務と因果関係があること

この場合、あくまで会社の労働者(社員)であることが鉄則で、請負契約や委任契約の場合は、通常補償の対象とはなりません

厚生労働省「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入および実施のためのガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/dl/pamphlet.pdf

在宅勤務者が自宅外で怪我をした場合は?

前述した通り、通常出勤や退勤など、オフィスと自宅の間の移動中に起こる災害は「通勤災害」にあたります。では在宅勤務者が自宅外で怪我をした場合はどうなるでしょうか?

在宅勤務者でも、出張や業務遂行のためにオフィスへ行く場合などは、会社の命令で仕事に赴いているので、業務災害にあたります。出張先での事故や、出張先との往復中にケガを負った場合は適用の対象です。ここで気をつけたいのは、出張先でも私的行為による災害は対象外ということです。例えば出張先から帰る前に仕事とは関係なく現地を観光し、その最中に災害に遭っても認定されません。

つまり前述した通勤災害の要件における、オフィスと自宅を結ぶ「合理的な経路」とは、原則寄り道を含まない、ということなのです。例えば帰社中にスーパーで買い物をして、お店の中で転倒した、同じく帰社中に美容室へ向かう道すがら事故に遭った、などといった場合は、合理的な経路を外れたとして労災の対象外になってしまいます。

ただし、車を使った業務遂行中に、渋滞していたので遠回りしたら事故に遭った、通勤電車が事故で止まり、振替輸送中に転倒した、子供の送り迎えでルートを替えた先で事故に巻き込まれたといった場合は、経路を外れていても合理的として認定されることが多くなっています。会社とよく相談して、ある程度のケースを想定しておくと良さそうですね。

業務遂行性と業務起因性

また、労災の適用範囲には、「業務遂行性」「業務起因性」も大きく関わってきます。

業務遂行性とは「労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態」を言います。例えば災害が発生し負傷した場合、その時に仕事をしていたかどうかが重要になってくる、ということになります。

業務起因性とは「業務または業務行為を含めて、労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態に伴って危険が現実化したものと経験則上認められること」をいいます。業務上必要な手続きをしに出かけて事故にあった場合や、過剰な業務のために病気が発症したと明らかに証明される場合などがこれにあたります。

このあたりは判断が難しい局面も多々ありそうですね。

ポイントは「事実認定」

どんなケースであっても、労災申請の手続きの際に重要なのは「事実の認定」です。このために、在宅勤務の際には仕事の時間と私的な時間を明確に区別し、作業場所を特定することが望ましく、また業務の進捗状況を上司に報告するなどの対策も必要ですね。

労災について理解が深まったら、次は労務管理についても考えてみましょう。

この記事を書いた人

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土佐光見

リモートワーク研究所研究員・ライター。 webショップの企画運営、web制作、ディスクリプションライティングを経験し、フリーランスに。リモートで働く二児の母。趣味は読書、観劇、俳句。

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