アメリカIBM社、フランスルノー社の海外テレワーク事情を解説!

アメリカとフランスの大手企業のテレワーク事情とは?

日本でも少しずつ取り入れられているテレワーク。導入を検討している企業にとっては、既に実施している企業の様子が気になるところです。そこで、海外に目を向けて、テレワークの先駆者である大手企業の動向を、アメリカのIBMとフランスのルノー社を例に解説していきます。

アメリカIBM社はテレワーク廃止!グーグルやフェイスブックでは?

まずアメリカの事情から検討していきます。日本よりもテレワークは広く進んでいるはずですが、IBM、グーグル、アップルやフェイスブックなど大手企業の実態を見ていきましょう。

テレワークの先駆者であるIBM

アメリカでテレワークの先駆者と言えば、IBMでした。急速なグローバル化に伴い国を超えて働く機会が増えたことにより、柔軟なワークスタイルが求められるようになり、フルタイムでの在宅勤務やサテライトオフィスの構築が主流となっていきました。そして、必要のなくなった各国の自社ビルを売却するビジネス戦略を取っていました。

IBMのテレワークの実績は1990年から始まり、2009年には世界173ヶ国・38万人の社員のうち40%がテレワークで勤務していました。しかしそのIBMが、2017年5月にテレワークの廃止を発表し、数千人もの在宅勤務の従業員に「オフィス勤務か退職か」をつきつけました。

IBMがテレワークを止めた理由

IBMが従業員をオフィス勤務に戻した理由は、社員間のコミュニケーション不足と言われています。フルタイムの在宅勤務は、効率的で生産的な働き方ができるというメリットがありますが、一方で、イノベーションを生み出すには不利である、という考えもあります。イノベーションを起こすためには、社員間の密なコミュニケーションや信頼関係が大切です。そのためにはオフィス勤務で日々の何気ない会話や気遣いなど、顔を合わせて仕事をする必要があり、それが今のIBMに求められていることであると判断したと考えられます。

アップル、グーグル、フェイスブックはオフィスを快適に

それを裏付けるかのように、世界にイノベーションを起こし続けるアメリカのアップル、グーグル、フェイスブックはテレワークを勧めていません。労働環境を快適にしてオフィスを魅力的にすることによって、社員にオフィスで働くメリットをアピールしています。また、IBMと同じくかつてテレワークを積極的に実施してきた米ヤフーも、勤怠管理がうまくいかなかったため2013年にテレワークを廃止しました。

アメリカではテレワーク導入率が50%である一方、大手企業では縮小の方向にあるのが現状であり、今後どのように展開していくか注目されます。

フランス大手自動車メーカー・ルノーはテレワークを推奨!

では次に、フランス大手企業であるルノーのテレワーク事情を解説していきます。フランスは職場にいることが重要とされる「プレゼンティズム」が浸透しているお国柄ですが、ルノーは10年以上テレワークを推進し続けている珍しい会社です。

ルノーによるテレワーク導入理由と利用者数

ルノーがテレワークを導入した理由は、①生産性向上、②通勤のストレス軽減、③QOL(生活の質)向上のためです。テレワーク利用者は2008年以降、毎年20%の割合で増え続けています。特に2010年の拠点異動で通勤時間が長くなったときや、2016年の大気汚染防止のための交通規制の際にテレワーク希望者が増え、現在はパリ近郊の施設に勤務する約20%の3200人がテレワークを利用しています。

テレワークを利用する頻度は、週1日が一番多く60%、週2日が31%、週3日が7%、週4日が2%で、週3日以上の利用の場合は特別な事情による許可が必要となります。フルタイムの在宅勤務ではなく、会社や社員にとって取り入れやすい形で対応しています。

管理職によるテレワーク利用

テレワーク利用者のうち、49%が管理職であることも注目するポイントです。半数の上層部がテレワークを利用していることからわかるように、ルノーではテレワークでの働き方が根づいていると言えるでしょう。ルノーでは、上で述べた2010年の拠点異動など経営の合理化を図る戦略に合わせて働き方を柔軟に変化させてきた経緯があり、経営陣と社員がテレワークのビジョンをしっかりと共有していることが、フランスでのテレワークの先駆者となった一因です。

さらに、マネージャー職の47%が自身はノマドワーカーであるという認識があり、特定のデスクをオフィスに持つ必要はない、と考えています。そこで個人専用スペースを減らして、代わりにコラボスペースやオフィスシェアを増やす動きになってきています。社外の人も使えるコワークスペースも誕生して、オフィス自体もどんどん変化してきています。

テレワークは社員の満足度が高い

それらが功を奏してか、テレワーク利用者の100%が現状に満足しており、77%がパフォーマンスが向上した、とアンケートに回答しています。そして、テレワークが可能な業種に就く社員の81%が今後利用したいと回答していることから、利用者数はさらに増えていくと見込まれます。

まとめ

アメリカでは大手企業が相次いでテレワークでの勤務を廃止していますが、フランスのルノーは安定して続けています。時代の変化や環境問題など社会的な理由を考慮しつつ、企業も柔軟に働き方を変えることが重要です。ぜひご自身の企業でも、社員と会社の両者が満足できるようなテレワーク導入を検討してくださいね。