【ボクらの働き方】倉貫義人(株式会社ソニックガーデン代表) × 田原真人(Zoom革命代表) × 武井浩三(ダイヤモンドメディア株式会社代表取締役)

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自分らしく働く時代。働き方が多様化する中、誰もが自分らしい働き方を模索しています。だけど、自分らしさには正解がないから難しい。

多種多様な働き方をする人々を迎えて「働き方」について再考するシリーズ「ボクらの働き方」。

第2回は、序列のないフラットな組織を運営する3人を迎え、自由に楽しく働くための組織づくりについて、語ってもらいました。


武井浩三

武井浩三たけいこうぞう

ダイヤモンドメディア株式会社 代表取締役 共同創業者
神奈川県出身。21世紀型の経営スタイルを実践。”人間性経営”、”フロー経営”、”非管理型経営”、”奇跡の経営”、”ホラクラシー経営”などと呼ばれる。ホラクラシーという言葉が生まれる以前より、ホラクラシー型の経営を実践し続け、ホラクラシー経営第一人者として講演活動なども行っている。

田原真人

田原真人たはらまさと

自己組織化ファシリテーター/オンライン教育プロデューサー/「反転授業の研究」代表/フィズヨビ代表/Zoom革命代表
早稲田大学応用物理学科から同大学院博士過程に進み、生物と物理の境界分野に強く関心を持つ。河合塾など大手予備校の他、小規模の塾などでも教え、微積分を使いつつも難しさを感じさせない「田原の物理」は、予備校の生徒から大きな支持を得るようになる。2005年にフィズヨビを設立。動画を使った学びを全国に先駆けてスタートする。「究極の学びシステム」をつくるために「反転授業の研究」グループを創設。また「Zoom革命」代表として、分野を超えた様々な活動をしている人たちと対話しつづけている。

倉貫 義人

倉貫 義人くらぬき よしひと

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長
京都生まれ。立命館大学大学院卒業。大手SIerにて経験を積んだのち、社内ベンチャーを立ち上げる。2011年にMBOを行い、株式会社ソニックガーデンを設立。「納品のない受託開発」という新しいビジネスモデルを展開。著書に『「納品」をなくせばうまくいく』『リモートチームでうまくいく』など。「心はプログラマ、仕事は経営者」がモットー。
ブログにて、人材育成からマネジメントまで、ソニックガーデンの経営哲学とノウハウについて、日々の学びを発信中。
http://kuranuki.sonicgarden.jp/

前編:組織も人も「コントロールしない」で作る

田原

ではまず簡単に、どういうお仕事をしているのかお話いただけますか?

武井

弊社は、不動産関係のwebのシステムやサービスを提供する会社でして、今現在社員は25名くらいです。最近話題のホラクラシー経営というか、そういった上下関係を作らない組織で創業当初から、かれこれ9年くらいやっております。

倉貫

私のところはシステムの受託開発をしています。そもそも納品があるから最初に決め切ろうとしてしまうし、決めて納品してしまうとそこから進化がなくなってしまう。そうするとユーザーさんも開発者も嬉しくないので、納品をなくして、月額定額で受託開発をするという形にしています。お客さんのところに行かずに実施するというのが最近の動きで、客先に行かなくていいなら会社にこなくてもいいよねということで、みんな在宅勤務という形で家から仕事をしています。オフィスは去年なくして、オフィスのない会社で30人ぐらいでやっております。

田原

多分みなさんが興味があるのが、「なんでこんなこと始めたんだ?」ってことだと思うんですよ。他の人とは違う形態の会社を始めたということは、お2人にとって何か思いがあると思うんですが、それはどういうものですか?

武井

僕はですね、社会経験がないんです。ずっと音楽をやっていまして。そこからサラリーマンはやりたくないから自分で会社をやるか!と始めて、1回失敗してもう1回やり直したのが今の会社なんです。どういう組織が良いのか、どういう意思決定の仕方がみんなに平等で良いのかを純粋に考えていったらこうなりました。「社長ってなんで必要なんだっけ?」とか「給料ってなんで自分で決めちゃいけないんだっけ?」とか「なんで休みたい時に休んじゃいけないの?」とか未だに良くわからないですね。

倉貫

僕ももともと会社経営を長くしていたわけじゃないんです。ずっと学生時代からプログラミングをしていてそのままSIerに就職したんですけど、大手SIerだと実はプログラミングの仕事は価値が低く見られるんです。上流工程っていうんですけど、お金に近いところの方が偉いという考えになる。あとは管理職になった方が偉い、お金がもらえるっていうのもありますね。これはよくないなと思って。プログラマのための良い会社ができないものかなとずっと思っていたところで、前の会社でチャンスをもらって社内ベンチャーをやらせてもらったんです。そこから経営者の人生が始まるんですけども、大手の会社で社内ベンチャーをやると、普通に起業するケースと違って、周りに経営者がいないんですね。

武井

ほう。

倉貫

若くして起業した人だと、周りにベテランの経営者がいて、そこから一般的な経営を勉強すると思うんですけど、社内ベンチャーの場合お金だけ出してもらって、経営を教えてくれる人がいないんです。結局自分たちで「締め日ってなんでこの日なんだっけ?」とか「契約するのになんでこの書類が必要なんだっけ?」とか「本当に書類じゃないといけないんだっけ?」とかを本当に突き詰めて考えていったら自分たちなりの経営に行き着いた感じなので…僕も(武井さんと)全く一緒ですね。経営の先生がいなかったので、良くも悪くも、自由奔放にできました。

理不尽なことが嫌い。本質的なことだけをやりたい。

田原

例えば今やってる活動の1ヶ所をひっくり返すと、整合性を取るために他のところも自動的にひっくり返っていって決まってくる、みたいなことを僕も感じるんですけども、武井さんも倉貫さんも、事業全体で整合性が取れてるように見えます。それが旧来の整合性の取り方と違う取り方をされているような気がしていて。一番大事にすることを決めると、他のところも自然に決まってきているような。その一番最初の押さえどころは何でしょうか?

武井

僕も倉貫さんも多分理不尽なことが嫌いなんじゃないかって思います。

一同

(笑)

武井

僕、周りの軋轢とか、長いものに巻かれろ的なものがとにかく嫌いなので。良いものは良い、あとは本質的なことしかやらない。仕事というもの自体をそのように捉えています。多分倉貫さんもそういうタイプの人だと…。

倉貫

そうですね。本質的じゃないことも嫌いだし、合理的じゃないことも嫌いですね。

武井

ああ、はいはい(笑)。

倉貫

僕らはプログラマなので、プログラマ的発想として、無駄が嫌いで、合理的なものが好きなんです。あとポイントはどこだろうなあ…会社経営というところで言うと、株主としての会社のオーナーはもちろん僕なんですけど、会社を自分がコントロールするものだと思ってないですね。入り口はそこな気がします。

武井

僕自身も人からあれこれ命令されるのが嫌いなので、自分が嫌いだから他の人にもやらない。

倉貫

そうそう。「社長だから」っていう特権があるとしたら、それはみんなにもあっていいと思うし、逆に会社は僕の持ち物ではないので、無理やり働かせて頑張らせるっていうのもできないし。

武井

そうですよね。そういうところを整えていくと、実はそっちの方が経済合理性や働く人の満足度も高くて、お客さんへ提供するサービスの質も継続的に上がっていくし、長い目でみたら絶対に良いというのはやってみてすぐにわかりました。でも最初の頃は僕も血気盛んだったので、事業のイメージを思い描いたら焦ってすぐになんとかしたくなっちゃったりもしましたけど、僕個人のエゴみたいなものが出ても、組織の中でそのエゴで何かできないんですよね。権力がないんで。

倉貫

わかるわかる。

武井

だから「しょうがねえな」みたいな。

倉貫

そうそうそう。

武井

それで僕は坐禅に行き着いたんですよ。

一同

(笑)

武井

このもやもやをどうしたらいいのかと思って。

組織は「生き物」だから、短期的な成長は見込めない。

倉貫

「しょうがない」って気持ち、わかります。僕は会社を、みんなが幸せに、長く楽しく働ける場所にしたいと思っているので、短期的な成長を目指していないんです。若い頃は野心みたいなのがあったんですけど、今はなくなりましたね。よく副社長と、「お金持ちになるのは今世は諦めよう」と話してます(笑)。諦める境地は経営においては大事かなと。

武井

成長って結果でしかなくって、ビジネスモデルによって成長速度って違うわけじゃないですか。例えば最近だったら、アプリのゲーム作って、当たればポーンっていきますし。でもやっぱりうちの会社やソニックガーデンさんみたいに、手を動かしながらお客さんと向き合いながらやる仕事って、そんな急角度で成長したら絶対にクオリティが下がっちゃう。

倉貫

そうなんですよね。人で満足して頂いているサービスである限りは、人を大事にせざるをえない。

武井

そうですよね。

倉貫

合理的に考えれば、人を大事にしたビジネスの方が会社としてはいいっていうのは、ビジネスモデルに従ってるところありますよね。

武井

そうですね。だから我々も、その時々のビジネスモデルに合わせて動き方を変えています。これって多分生物で言うと、それぞれ違う生き物だってことなので。違う生き物の成長速度を当てはめてもしょうがないですからね。

倉貫

そうそう。僕も会社自体を人間みたいなものだと思っているんです。うちの会社はKPIがないんです。数字化しないし、数字を特に目標にしない。あと、コントロールされるのも好きじゃないし、するのも好きじゃないから、なるべく人をコントロールしないようにしようと思っています。昔は会社は小さい方がかっこいいと思っていたんですけど、だんだんほっといても良い人材が来るようになってしまって。それを拒み続けるわけにもいかないので、いつの間にかちょっとずつ会社が成長してるんですね。5人で始めて今30人なんですけど。それで思ったのが、「会社の成長もコントロールしようとしてはいけないな」と。

田原&武井

うんうんうん。

倉貫

急成長しようとか、今期売り上げ何倍だ!とか目標を立てるのって、無理に成長させようとしてるところがあるんですよね。つまり成長をコントロールしようとすると、無理が出ちゃう。逆に僕らは小さい会社がいい、小さい会社でいようって思ってましたけど、それもコントロールしようとしてることになってたんです。それはよくないなと。大きくなるも小さくなるも、自然に任せるのでいいんです。例えば子供を「1年で20センチ成長させよう!」とか思わないですよね。親が子供を無理やり成長させるのなんて無理で、年月が経たないと成長しない。会社や組織も同じような考え方で見守った方がいいんじゃないかと考えてます。

武井

めちゃくちゃ共感します。うちも会社を植物のように考えたりしてるんで、その植物に水をあげたり良い土壌をあげたりしても結局育つのは植物そのものなんで…

倉貫

そうなんですよ。期間が必要なんですよね。

武井

見守るしかないというか。

倉貫

そう。たくさん耕しても無理なんですよね。

一同

(笑)

倉貫

栄養を多くあげて、きゅうりとかナスとか「二日でできます」って…

武井

食べたくないですよね。

倉貫

そうそうそう。怖いんですよ。実はソニックガーデンの社名の由来はそこなんです。ソフトウェアを作るのも結局同じで、例えばfacebookに対抗するアプリを作るためにエンジニアを1000人集めたとしても、3日でできるわけはなくて。facebookも長い期間かけて成長させてきたから今のソフトウェアの規模になってるので、良いソフトウェアを作るには、人手よりも期間が必要だという発想から、僕らは「ガーデン」ってつけたんです。

武井

なるほど。

倉貫

その考え方を組織にも当てはめてるって感じで。

武井

素晴らしいですね。

合理的な態度は、人の感情を排除するというわけではない。

田原

倉貫さんはプログラマだから合理的にやりたい。でも一方で、命令されるのは嫌いだし命令したくもないとか、社名がソニック「ガーデン」だったりとか、オーガニックな部分があるじゃないですか。プログラマという生き方が中心になって、思考は合理的なんだけど、感情的な部分もすごく大事にされていますよね。その合理的な部分と感情を大事にする部分が、組織の中でバランスされていると思うんですけども、その辺りはどうですか?

倉貫

実は僕、プログラムを作るように合理的に、血も涙もないようなマネジメントをしていた時期があったんですけども。

一同

(笑)

倉貫

人を部品のように扱って、計算通りに動かそうとしたんですけど、全然うまくいかなくて。それでよくよく考えたら、ソフトウェアを作る時に必要な材料って、ないんですよね。車とか船だったら、鉄やネジやゴムが要るんですけど、ソフトウェアやビジネスみたいに、形のないものを作り出す時に必要なのは、人間の頭だけなんです。頭の中なんて見えないし、その人のやる気次第でソフトウェアの品質や生産性は全く変わってくる。頑張ってるか頑張ってないか、外から見えないものをコントロールしようとしてももう無理だなと思ったんです。
ソフトウェアの世界で有名な「ピープルウェア」っていう本に、「ソフトウェアは人間が作るんだよ。なので人間を大事にしないといいものはできないよ」というようなことが書いてあったんです。それを読んで「そりゃそうだな」と。自分が逆の立場だったら、そんなのでいいプログラム書けるわけないんです。じゃあやっぱり人の気持ちや感情を大事にする方が、結局良いソフトウェアにたどり着くんじゃないかというロジカルな発想でやってる感じですね。

田原

なるほど。

倉貫

そこにたどり着いてからは、そっちのがむしろ合理的だと感じてます。必ずしも合理的なことが人の感情とか人間性を排除するわけではないってことですかね。

田原

非合理を含んでいるのが、もうちょっと広い範囲でいうと合理的だっていうことですね。

倉貫

そうですね。

個人を評価する時に「誰か」の意図はいらない。

田原

武井さんは、音楽、特にブラックミュージックがイメージの土台にあるじゃないですか。僕がお2人から話を聞いていて、どちらもお金が外発的動機付けにならないようにしたいというところが同じで、その後に出てくるソリューションが全然違う方向に向かってるというのが面白く感じます。
武井さんは話し合って、自分で決める。そこが外からの上限付けとか権力に使われないというやり方をされてるし、倉貫さんは、「全員同じ」にするから、このことはもう考えないで自由になれるという。やり方は違うんだけれども、そこによって外したいものは同じ。その外し方の違いが音楽から来た人の感覚と、プログラマから来た人の感覚が出てるなと思うんですけども、どうでしょう?

武井

そうか、確かに。ソニックガーデンさんは(給料は)だいたい一律なんですか?

倉貫

だいたい一律です。「一人前」って呼ばれる人になったらもう一律です。新卒の人たちは「弟子」と呼ばれていて、みんなが稼いだお金のおこぼれで生きていることになるので、そんなに給料は高くないです。で、修行が終わって一人前になったら一気に上がる。

武井

なるほど。

倉貫

一気に上がった後はあんまり変わらない。昔の会社で言うような、「長くいる人はお金がたくさんもらえる」ではなくて、入社して、良いパフォーマンスが出るようになったらもう一気にあげてしまうんです。(給料を)ちょっとずつ上げるって、幻想ですよね。成長するから、お金もあげるから、君はこの会社でずっと頑張りなさいっていう幻想がいやなんです。会社の収入を山分けするような感覚ですね。プログラマは短期的に評価できないっていうのが僕の持論なので、個人評価を僕らは会社としてはしないんです。彼らは営業みたいに案件とってくることも、新しいものを売ってくることもできなくて、できるのは、毎月お客さんに満足してもらうことだけ。だから「売り上げを上げる」というような頑張り方ができないんです。だとしたら、今のお客さんに満足してもらって、そのお客さんが長く続けば、結局本人が稼げる分が長く続く、という考え方にして、短期的な評価をやめました。

武井

なるほど。これビジネスモデルの違いっていうのも結構ありそうですね。

倉貫

大きいですね。

武井

うちの会社は、社内にいっぱい職務があるんですよね。ディレクターもいれば営業もいるし、管理部門やプログラマ、デザイナーも。それでいろんな給料の決め方を考えて、散々試して来たんですけど、やっぱり営業にしても貢献度ってあからさまに差が出ますし、特にうちの場合は安定的な事業モデルにはどうしてもできなくて、新しいサービスを作るには技術的に能力ある人しか着手できなかったりします。やっぱりそういうところに対して適正な差がないとダメなんじゃないか、じゃあその適正をどうやって決めるのかというのを考えた結果、労働市場においてマーケットバリュー化してしまうという方法になりました。その労働市場にさらされるのは僕もなんです。僕の給料も、労働市場で僕という人間がどのくらいの評価をされるのかを見ながら、また会社の中で相場を作って、差が適正かどうかというのを半年に1回決めるんです。
人を評価しないというのは一緒で、1人ずつピックアップして「あなたの給料いくらがいいかな?」という話し合いはしないですね。

倉貫

世の中が決めてくれるってことですね?

武井

そうですね。で、この人とこの人の給料の差が適正かどうか、そういうところを調整しています。

倉貫

じゃあ労働市場を参考に、だいたい順位が決められてくるってこと?

武井

そうですね。労働市場だったり、彼の業務をアウトソースしたらいくらくらいになるかとか。

倉貫

そうですね。わかりやすいですよね。

武井

で、あとはこういう人を採用してくるとどのくらいの採用コストと採用の難易度があるかとか、そういうものを加味して、その1人1人の希少性をきちんと評価します。実力のある人ほど適正に評価されることになるので、辞める動機がなくなりますね。

倉貫

いいですよね。誰かが誰かを評価するんじゃなくて、マーケットに見てもらうのは、方程式というかロジックがあってやるわけなんで、人の意志があんまり入り込まないですよね。

武井

そうですそうです。

倉貫

それは僕らもいいなと思っていますね。

武井

雇用形態は自由なので、「この給料が納得いかない」と思うのであれば、雇用関係は解消してフリーランスになって、会社とフリーランス契約するかしないかをまた協議します。でもそれだったら会社としては契約しないなあ、とか、そういう話し合いが出てきますね。めちゃくちゃシビアですよ、給料に関しては。

倉貫

そこの原則は共通してる気がするなあ。誰かの意図をなるべく入れ込まないようにしている。

武井

そうですそうです。

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