【ボクらの働き方】倉貫義人(株式会社ソニックガーデン代表) × 林宏昌(株式会社リクルートホールディングス 働き方変革推進室 エバンジェリスト/Redesign Work Inc. 代表取締役社長) × 岩崎奈緒己(リモートワーク研究所副所長)

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自分らしく働く時代。働き方が多様化する中、誰もが自分らしい働き方を模索しています。だけど、自分らしさには正解がないから難しい。

多種多様な働き方をする人々を迎えて「働き方」について再考するシリーズ「ボクらの働き方」。

第3回は、副業や働き方改革をテーマに、より枠にとらわれない働き方を推進する林さんを迎え、リモートワークラボ所長・副所長とトークしていただきました。


林宏昌

林宏昌はやしひろまさ

株式会社リクルートホールディングス 働き方変革推進室 エバンジェリスト/Redesign Work Inc. 代表取締役社長
2005年、リクルート入社。住宅領域の新築マンション首都圏営業部に配属。優秀営業を表彰する全社TOP GUN AWARDを二年連続受賞、6年目でマネジャーに昇進する。2012年より社長秘書を務め、2014年に経営企画室室長、2015年より広報ブランド推進室室長兼「働き方変革プロジェクト」プロジェクトリーダー、2016年から 働き方変革推進室(※2018年2月時点)室長に就任し、現在(※2018年2月取材時点)に至る。
岩崎奈緒己

岩崎奈緒己いわさきなおき

リモートワーク研究所副所長
システム開発会社、モバイルコンテンツ事業会社を経て、2015年より株式会社ソニックガーデン経営企画室長、リモートワーク研究所副所長。コミュニケーションツール選定から労務管理やセキュリティの相談まで幅広いリモートワーク導入支援を行う。リモートワーク企業向けITツール開発にも携わる。
倉貫 義人

倉貫 義人くらぬき よしひと

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長
京都生まれ。立命館大学大学院卒業。大手SIerにて経験を積んだのち、社内ベンチャーを立ち上げる。2011年にMBOを行い、株式会社ソニックガーデンを設立。「納品のない受託開発」という新しいビジネスモデルを展開。著書に『「納品」をなくせばうまくいく』『リモートチームでうまくいく』など。「心はプログラマ、仕事は経営者」がモットー。
ブログにて、人材育成からマネジメントまで、ソニックガーデンの経営哲学とノウハウについて、日々の学びを発信中。
http://kuranuki.sonicgarden.jp/

第1回:僕が副業を始めた理由

倉貫

林さんは今リクルートで働きながら副業で会社を持っていらっしゃる。副業はどういった経緯で始められたんですか?

そうですね。もともとリクルートは副業自体はオッケーなんですよね。僕自身のきっかけは、リクルート内で働き方改革をやったことです。

倉貫

リクルートは副業してもいいんですね。

そうそう。事業の競合先でない、組織長及び人事部署長の承認を得る等、条件を満たせば基本的に大丈夫です。とはいえ、副業するような時間的な余裕はない。働き方改革では、個人の時間をもっと創出したいと考えて進めてきたこともあり、僕自身少し時間も出来てきた事もあります。「副業しよう!」と思って副業を始めたというよりは、結果的に副業することになりました。

倉貫

「やろう!」じゃなくて、自然と始める流れに?

そうです。働き方改革をやって、いろんな企業の方々とお話しするようになったんですが、みなさんつまずいてたり、あるいは全くうまくいってなくて、苦し紛れに夜、電気消してみたりPCを強制的にシャットダウンしちゃうみたいなことになってて。

倉貫

ドローンが飛んできて帰りを促したり…。

そうそうそう。

一同

(笑)

ボクらの働き方

もう、どこを目指してるのかがわからない状況で。働き方改革の本質って、個人が多様な形で働けて満足や幸せを得られるということと、企業の成長が加速するということ、この両輪を回すことだと思うんですけど、両方壊れてるわけですよね。

岩崎

ありがちですね。

「定時だから帰れ」と言われて嬉しい人もいれば、あと30分残業して終わらせてしまいたいという人もいる。みんな個別の状況を抱えているのに、全員一律で施策を打つから、こじらせて変な形になってる。でも、具体的にどうやって働き方を変えていけばよいのかはだれもわからなかったんですね。
であれば、リクルートが率先して、トライアンドエラーして、失敗したことはサイトにも出してオープンにしていこう。そうやってナレッジを出しながら、みんなの働き方改革の起点になれたらいいなと思ってやってきました。そんな中で、もう一段入って、コンサルティングして欲しいとか、アドバイスをもっと具体的にもらえませんかと言われるようになりまして、それなら僕自身が会社を作ってやろうかなと。そういう文脈でこれを僕の副業にして、ついでに自分の会社での副業をもっと推進して行こう、そう思って始めたのが去年の5月くらいです。今メンバー3人で、全員副業・全員リモートという形でやってますけど、何の問題もないですね。集まる必要もないし。

倉貫

副業で起業するのに、別にオフィスもいらなければ席もいらないし、集まる必要もない。その辺も副業をやりやすくなった要因ですよね。事務所を借りたら初期投資もかかるし、ランニングコストもかかるし。

事務所どうするんですかって、結構いろんな人に言われるんですけど、逆に「事務所いるんですか?」って。メンバー3人、お客さんのところでしか会わないんですよ。

一同

(笑)

岩崎

逆にそこが集合場所(笑)。

そうそう。今僕らチャットツールはマイクロソフトのTeamsを使ってるんですけど、そこどんどん作業を投げて分担して、何のストレスもなくやってます。

働き方改革、うまくいく会社といかない会社

倉貫

他の会社さん見るとやっぱり違いますか?

面白いことに全然違うんですよね。僕らのお客さんは大企業が多いんですけど、「失敗してはいけない」というのは多いですね。僕らも大企業ですけど、リクルートならではの軽やかさが結構あるんだなあと。

倉貫

企業文化はありますよね。各社によって。

ボクらの働き方

そうですね。前例の無いことに取り組みたい会社さんも、前例や実績を大事にされている会社さんもあったり、ボトムアップで進めていこうとされているのかトップダウンで進めていこうとされているのか、それぞれ客観的に見ていると良し悪しもわかってくるんですよね。会社によっていろんなカラーがあるのも面白いです。自社の考え方や風土を客観的に見られるようにもなりますし。

倉貫

自分を客観的に見られるというのはメリットですね。

あとはどこまで入るかっていうのも悩ましいテーマではあって、もう全部やっちゃおうかなって思う時もあるんですけど、時間的なリソースが僕自身限られるのと、最終的にはその会社の中で自律的に回って行くことを目指してるんで。

岩崎

林さんが抜けてまた戻ったら意味ないですもんね。

そうですね。一定程度自律的に回って行くところまでは伴走をしたいなと思ってるんで。

倉貫

僕らはソニックガーデンという会社で、自分たちが使ってるリモートワークのためのツールを販売してますけど、それだけやっててもダメなんですよね。もっと根本的な、リモートワークの導入から相談に乗った方がいいし、その結果うちのツールを使わなくても、お客さんが良くなったらそれがベストだと考えていて。そのためにソニックガーデンという場所とは別に、ちゃんとリモートワークの相談を受け付ける場所として、岩崎さんとリモートワーク研究所を作ったんですよ。

岩崎

僕はもともとソニックガーデンで、リモートワーク向けツールのマーケティングをやっていたんです。お客さんにツールの説明をすると、多くの場合「いいですね、使ってみたいです」って言われるので、本当にそんなにすぐ使えるのかな、と不安を抱えつつ渡すんですね。それでしばらくすると「やっぱりうまくいかない」っていうパターンが多い。

ああー、わかります。

岩崎

みんなツールから入ろうとして、それは別に悪くはないんですけど、うまくいかない理由が最初わからなかったんです。たまたま合わなかったのかな、ぐらいに思ってて。そのうち「合う」って会社がだんだん出てきて、真面目に違いについて考えるようになりました。その後、リモートワーク研究所の副所長という役割になって、いろんな会社の担当者の方とこれまで100人以上お話してきました。その過程で、うまくいくケースとうまくいかないケースが見えてきたんですよ。言語化するのは難しかったですが、ツールだけ売っていこうとしても難しいなと。

何が必要だったんですか?

岩崎

うまくいったケースとうまくいかなかったケースのどこが違ったのかをよく考えて、今ちょうどその延長でコンサルティングみたいなことをやり始めているんですが、うまくいってる会社もみんな一様だと思ってたんですけど、実は3つぐらいパターンがあります。1つ目は簡単で、最初からみんなリモートワークしている会社。

一同

(笑)

岩崎

これは真似が難しいんですよ。当然全部リモートワーク前提で綺麗に組み立てられている会社ですから、それを今までオフィスワークで、しかもそれが良いという文化であった人たちが真似しようとしても無理なんです。
2つ目はうまくいってるように「見える」パターン。ガチガチに制限を入れてるんです。週1回だったらまだ良い方で、月1回とか、隔週に1回とか。僕が聞いてびっくりした条件は、「家でやる方が生産性が上がるという根拠があって、それが上司に承認された場合」。どうやって説得するんだろう?って言う(笑)。

倉貫

難易度高い(笑)。

岩崎

要はたまに使うっていうケースですね。会社としては制度があるので、「導入しています。うまくいってます」といえる。他には家を缶詰みたいに使う方も多いんですね。「今日人事考課するから家でやる」とか、「今日は体調悪いからメール見ないで書類仕事だけやる」とか。これ、うまくいってると言われるんです。集中できると。この2つ目のパターンには「広げられない」という問題があるんです。

本質に踏み込んでないですもんね。

岩崎

で、3つ目が、みなさんにおすすめしてるんですけど、できるだけ情報格差をなくしていくパターン。林さんも先ほどツールを使ってやられてるとおっしゃってましたけど、ツールをうまく使ってオフィスっぽいやり取りを、できるだけ情報格差なくしてリモートでやれるようにするんです。会社によってツールも色々だし、制度も色々だし、業務によってかなり違うんですけど、リモートが下でオフィスが上とか、そういう形にはなってない。そういう会社は成功してますね。なので一律でガッとやるのは難しいんじゃないかなって。

部署によってもまた違うじゃないですか。

岩崎

そうなんですよ。

『全社一律の人事制度』から脱する時が来ている

全部署横断で一律の人事制度っていうのが限界を迎えているんじゃないかと。やっている仕事の中身とか、コミュニケーションする人の数とかスピードによって、多分使うべきツールもやり方も変わるはずなんです。だから人事制度も当然違うはずで、そこを統合するんじゃなくて、バラバラで実験したり、何が最適か探求するといいんですけどね。

岩崎

そういうのって大きな会社でITコンサルティングやってると「汎用性が」とか「全部統一して」になりがちじゃないですかね。そこはどうやって進めていかれるんですか?

汎用性の中でも汎用化できる部分と、個別最適できる部分をどのくらい残すかという話を、何回もしていくという形しかないですね。やっていくと、失敗も成功もある程度パターンが見えてくるんで、それを積み重ねていくと「これやったらどうなるんだろう?」って聞かれた時に「こうなりますよ」って言えるんですね。そうやって個別最適は示してあげながら、しっかりと進める。自分たちならではの何を大事にするかということでもありますし。

岩崎

何もかも変えちゃうのかってなると不安ですもんね。

そう。「全部変えるのか?」っていう問いは切り分けてあげなきゃならないですね。「文化を変えるのか?」っていう問いも出ます。例えば、大部屋でわいわいみんなでコミュニケーション取りながら仕事をするスタイルだったとして、そこは変わりませんよと。でもツールを使ってコミュニケーション増やしていけば、実は場所がバラバラでもできるということが、僕たちの今までの実績からわかってる。そこがわかるまでは、バラバラになったらコミュニケーション減るんだろうな、とか、チームワーク低下するんだろうなって思ってたんですけど、それは実はそう思ってるからそうなっていくだけのことで、絶対回避しようって思いながらやったらできるんですよね。

ボクらの働き方
岩崎

そうですよね。リモートワークって、どちらかというと子育てとか、家庭との両立みたいなところでよく引っ張り出されるんですけど、それだけだと「なんでリモートワークをするのか?」が弱いなと思うんです。実際僕らはリモートワークをやっていて、効率はよくなるし、コミュニケーションも増えます。「透明性が減る」「何やってるのかわからない」なんて言われますけど、実はオフィスでこそこそやってるよりよっぽど全部見えるんです。リモートワークは福利政策的なものじゃなくて、経営戦略とか全体戦略みたいな企業のプラスを補強できるということがもうちょっと知られていいんじゃないかなって気はします。

僕らの役割は特に経営として価値があることをしっかり証明していく側だろうなと思っています。ロマンとそろばんみたいな話ですけど、多様な人が多様な働き方ができる社会っていいですよね。でもそろばんの文脈で言うと、「儲かるの?」「いい人採用できるのの?」っていうシンプルな問いがあって、これは両方実現していけるし、両方大事だと思うんですよね。

岩崎

そうですね。

両輪をどう回していくのか

大企業の人たちが働き方を変える為には、両輪をどう回していくのかってことを考えないと、ちゃんと動いていかないんですよね。その両輪を回す時に一番大事なのは、いかにしてそこにトランジションするのかということなんですけど、これが一番難しい。さっき岩崎さんがおっしゃった、最初からリモートワークでしたみたいな会社はそりゃもう合理的なんですけど、それが合理的だとわかっていない人たちが、合理的な世界に気づき、そっちに向かっていく為にはどのステップで変えていくべきなのか?これが難しいんですよね。でも僕らはそれを大企業で一定程度進めていく中で、たくさんの反対意見や、リスクに対する不安をいただく経験をしてきました。だからこういうステップで話しましょうね、こういうことでアンケート取っておきましょうね、こういう形でデータ取りましょうねと言えるので、ある程度進めるノウハウが蓄積できてきましたね。

倉貫

それはもう企業ごとに合わせて考える感じですか?

割とそうですね。

倉貫

リクルートと同じやり方をやりましょうと言ってもうまく行かないですよね。

ええ。それぞれの進め方とか思惑とかスピード感とかもあるんで、ほんとそれぞれですね。

倉貫

そういうのがなかなかできなくて、僕はコンサルは今世は諦めようかなと思ってるんですけど(笑)。よく僕の講演を聞いた方から相談がきて、ソニックガーデンではこうしてますって話をすると、「それは無理だ」って言われます。

言われる言われる。

倉貫

で、どういう状況かもうちょっと突っ込んで聞いて、「じゃあそもそもこうした方がいいんじゃないの?」って言うと、今度は「そこを変えると弊社ではなくなります!」って(笑)

一同

(笑)

倉貫

その人なりのアドバイスを考えるのってなかなか難しいなって思って。いろんな会社見てると、こっちでうまくいったけどこっちでうまくいかないというのはやっぱり出て来ますよね?

出て来ますね。

倉貫

共通して大企業ならではなところはあるんですか?

岩崎

僕の印象だと、数字や定量で示す必要がありますね。まずそれを出せないと話が進みにくい印象です。

ボクらの働き方

「とりあえずやってみよう!」みたいな物事の進め方はあまりやらないことが多いでしょうね。やっぱり一定程度確立されたやり方があって、過去から積み上げてきた蓋然性の高いKPIを掲げてそこに向けて事業を進めるので、そこを大きく変えたり全く未知な話に飛び込むっていうのは難しいです。
あとはウォーターフォールっぽくやろうとするところがあります。一年後・三年後の理想の働き方を描ききって、価値あるテーマにフォーカスして、KPIを描ききって、ミスなく推進せよ!みたいな。

倉貫

ありますね!

『働き方改革』は『新規事業開発』に近い

僕らは働き方改革というのは、実は新規事業開発に近しい、そういう進め方がいいと思っているんです。先に方針やKPIを掲げても、そこに方法論は何もないわけですよね。例えば会議減らそう、早く帰ろうって言っても、実際どうやったら会議が減らせるのか、どうやったら早く帰れるのかっていう方法がないので、結局進まない。それを方法がないままウォータフォールで、いつまでに何パーセント削減されているのか、みたいなことをマイルストーン切って進めていくけど、KPI置いてるから、「とりあえずなんでもいいから帰ってください」ってなりがちで。これ、冒頭でも言ったことですね。

倉貫

なるほど、それ面白いな。今まで働き方改革とか意識改革を、「新規事業」って見た人がいない気がするんですよね。

いやもう全くそのやり方に近いんですよ。

倉貫

言われてみるとそうなんですよね。その確立したやり方があるわけじゃないし、さっき話した通り会社ごとに背景があって、人数が違えば文化も違うわけで。

そうそうそうそう。

倉貫

ゴールははっきりしてるけどそこまでの道筋がたくさんあって、行き止まりに行ってまた戻って来てって繰り返すのは、確かに新規事業ですよね。

ですね。

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