セキュリティ会社がリモートワークを導入したら〜株式会社FFRI(前編)

リモートワークをもっと当たり前の社会にするために、「リモートワークは普通!」になっている会社を紹介していきます。今回は、セキュリティソフト「FFRI yarai」やマルウェア自動解析システムなどを開発するサイバーセキュリティ集団・株式会社FFRIさんのお話しを伺いました!

リモートワークのテスト運用で問題点を拾いあげながら着実に環境を構築し、現在はエンジニアを中心に社内の半数以上がフルリモートで働いているというFFRIさん。導入時に持ち上がった問題や苦労話などを語ってくださいました。


萩原 拓郎

萩原 拓郎はぎわら たくろう

株式会社FFRI 経営管理本部 情報システム部 部長
2012年3月より株式会社FFRIに在籍。情報システム部長として情報システム全般の対応をしている。スマホや内線交換機、オフィスネットワークの物理配線からスイッチやルータ、ファイヤーウォール、WiFi、通信回線といったネットワークと、リモートワーク用やオフィス内使用のデスクトップなど業務用PC、オンプレミスのラックマウントサーバ、VMware ESXi、VPSやクラウドサーバのインフラまで幅広い業務を担当している。 これまでは主にサーバインフラの構築、運用を経験してきており、Web、DNS、ファイルサーバ、Proxyサーバ、ディレクトリサーバ、監視サーバなどいったオープンソース系サーバの構築、運用の経験をしてきている。スクリプトはPerlを使っているが最近はgolangを始めている。
北村 拓郎

北村 拓郎きむら たくろう

株式会社FFRI 製品開発本部 製品開発部 ソフトウェア・エンジニア
東京都杉並区阿佐谷生まれのプログラマ。 2017年5月より株式会社FFRIに在籍。2017年12月からリモートワークを開始し、横浜市港北区の自宅から会社までの通勤時間が無くなったことによって空いた時間を利用して近所のジムに通い始める。長年の憧れであった「平泳ぎで25m泳げるようになる」という目標をついに果たした39歳。2児の父。 製品開発部のメンバーとして自社製品であるFFRI yaraiの開発や管理用のWebサーバーの開発、構築に従事し、Windowsドライバやサービスの開発からWebサーバーの開発、構築まで幅広く手掛ける。
塩田 弘晃

塩田 弘晃しおた ひろあき

株式会社FFRI 製品開発本部 製品開発部 ソフトウェア・エンジニア
2016年4月より株式会社FFRIに新卒として入社。ソフトウェア・エンジニアとして自社製品であるFFRI yaraiを中心に設計・開発に携わり、Windowsのネイティブアプリケーションやドライバー開発を主な担当とし、その他にも開発用のWebシステムの構築・運用、またエンドユーザーからの問い合わせ対応といったテクニカルサポートまで幅広く担当している。

半分以上の社員がフルリモート

ではまず最初に会社の概要から教えていただけますか?

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はい。弊社はサイバーセキュリティの研究開発をしている会社です。この分野は、日本国内で研究開発までしている会社が珍しいんです。今電気屋さんなどでよく見かける有名なウイルス対策ソフトは、大概海外製品を日本で運用してるだけなんですね。それをイチから作っているのが特徴です。

なるほど。今主力の商品は、「FFRI yarai」というソフトですね。本社が恵比寿ということで、あとはもうひとつアメリカにも会社があるとお聞きしましたが。

FFRI yarai
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そうですね。子会社があります。今その2つで運用しています。

全体で何人規模の会社なんですか?

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最新の数字は(※2018年11月現在)92ですね。

その中でリモートワークをされてる方はどのくらいいらっしゃるんですか?

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全体の半分ぐらいがエンジニアで、現在リモートワークの対象がエンジニアと営業の人間で、ほぼ毎日ですね。私のような管理部門は週に2~3回のペースになっています。

リモートワークのスタイルは、人によって違いがありますか?全く会社に現れない方もいれば、ふらっと来る人もいるような。

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そうですね。エンジニアと営業は基本毎日リモートでいいんですけれど、用事があるだとか、誰か社外の人にお会いするという時は出社してる人間がいますね。

じゃあ、今、この場に集まってくださった皆さんは、リモートワークなんですね。

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私以外の3人は今、自宅から。萩原はフルリモートではないですね。

萩原

ええ。私は、週に2~3日リモートで勤務しています。

そういうのは事前に申請して「何曜日、何曜日はリモートワークしますよ」という形なんですか?

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管理部門は事前申請制ですね。

チームでのやりとりはどのように行なっていますか?「今日は私は家にいます」とか「今日は出社しています」みたいなのを朝に連絡し合うようなスタイルですか?それとも、ルーティンが決まっていて、もう皆さん、なんとなく把握してる感じなんですか?

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事前申請して「この日はリモートにする」っていうのをグループウェアに登録してます。社内のみんなが「この人は今日リモートなんだ」っていうのが。見れば分かるようになってます。

それぞれのチームで、全員リモートワークっていうチームももちろんあるんですよね、エンジニアさんとか。

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そうですね。

コミュニケーションツールは具体的に何をお使いですか?

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Slackがメインです。グループウェアでみんなの予定を把握して、連絡はSlackで、が主流ですね。

テスト運用を経て段階的にリモートワークを導入

リモートワークを本格導入する以前に、テスト運用があったとお伺いしました。運用に実際参加されてどういう感じだったか、運用に際して抱いていたリモートワークへの印象などお伺いできますか?

北村

はい。リモートワークという働き方があるのは知っていましたし、興味もありました。こちらで試験運用という形になった時に、いろいろ困難はあるんだろうけど、「ぜひともやりたい」と思いました。

塩田

自分は新卒で入ったので、リモートワークという言葉は知っていましたが、「家で働く」というようなイメージしかなくて、実際どういったものかっていうところは想像でしかなかったんですが、気持ちは前向きでした。

実際テスト運用に参加してみて、戸惑いはありましたか?

北村

もともと製品開発部で、連絡やレビューもSlackやGitHub経由で行うのがほとんどだったので、あんまり違和感はなかったような気がしますね。仕事柄、対面でないと仕事がしにくいとは感じませんでした。

塩田さんは新卒の年にテスト運用だったんですか?

塩田

入社して2年目ですね。1年目は出社して、2年目の途中からリモートワークのテスト運用が開始しました。1年間ずっと出社していたのが急に「出社しなくてもいい」ということになったので、若干戸惑いはありましたけど、北村が言ったように、もともとチャットベースでやりとりしていたので、業務に関しては特に違和感なくリモートワークへ移行できたんじゃないかなと思っています。

塩田さんのホームオフィス

コミュニケーション面ではどうでしたか?

北村

製品開発部内の、例えば塩田のように既に顔を見てリアルで話したことのある人に関しては、チャットでいきなり話しかけたり、ビデオ通話したりということにあんまり抵抗ないんですけれど、全く別の部署の人と新しく何かをしなくちゃいけないという時に、多少の抵抗はありましたね。少し気を使って、できるだけ分かりやすい文章で送ってあげなきゃいけないよな、とか…。同じ事務所内にいたら、ちょっとその人の席に行けば済むものが、チャットでやるとなるとハードルが上がるんですよね。

なるほど。現在出社することもありますか?

北村

ひと月に1回ぐらい。例えば萩原に相談ごとがあって、少し話が長くなりそうな時は、自分から出向いてますね。

塩田さんも同じような感じですか?

塩田

そうですね。今までは対面で顔をのぞけばその人がいて「この人、忙しいんだな」とか、忙しそうで声をかけづらかったら、「ちょっと他の人に聞こう」とか「時間帯をちょっとずらそう」とかがすぐ見えたんですけど、どうしてもSlack上のアイコンだけだと、「今声を掛けても大丈夫かな」と考えたりしますね。

導入までは無数の細かい選択肢が

萩原さんは上司という立場でリモートワークの導入に立ち会うことになりましたが、テスト運用の人選などはどのように行われたんですか?

萩原

テスト運用は部署単位でした。製品開発部から始めることになって、徐々にリモートワークのテスト運用をする部署を増やしていったという流れです。

テスト運用をやってみて、全体をまとめて最終的に本格運用に移っていったと思うんですけど、テスト運用の段階で気づいたことや、逆につまずいたことはありましたか?

萩原

そうですね、まずデスクトップをやめてノートパソコンにしましょうとなったんですが、エンジニアが使うものは、予想以上にハイスペックなものが必要でした。それからカメラとか、マイクとか、スピーカーは標準装備じゃないとリモートワークには差し支えるだとか、エンジニアでない社員が使うものに関しても、細かいところを含めてPC自体のスペックをきちんと見直さなければならなかったですね。
それから、現在Slackを使ってコミュニケーションを取るようにしてますけれども、ツール選びに関しても、フリーで使えるものから始めて、周囲の要望を汲みつついろいろ検証して最終的に使うものを絞り込んだりと、いろんなところでそういう試行錯誤がありました。

リモートワーク制度の導入は、会社の指示というか、上の方から下りてきたんですか?

萩原

そうですね。やっぱりセキュリティーとの兼ね合いで「リモートで大丈夫なのか」みたいなところがあるので、セキュリティーや業務効率に関する判断が上の方であって、「じゃあ、やりましょう」という決定が下りてきました。

その後、制度自体を構築するのには、萩原さんがかなり関わってこられたんですよね?

萩原

システム部分は特にそうですね。

最初に「導入しますよ」と言われて何から手を付けたんですか?

萩原

先ほどのノートパソコンの話ですね。一般社員が使っていたようなものとは比べようもないくらいのハイスペックなものでないと、エンジニアは仕事ができない。そういうことをひとつずつすくい上げてきちんと把握することからでした。私の方で認識できていないことがいくつもありましたね。

気の遠くなるような作業ですね。

萩原

ええ。接続回線の話も大きかったですね。従来使っていた回線だと、通信速度が遅かったんです。リモートワークでそれでは困るだろうということで、インターネット回線自体を変えました。それから、社員が自宅の回線を使ってリモートワークをするにあたって、自宅にインターネット回線を引いてない人がいたらどうするんだという話もありましたね。手当を出して回線を引くのか、モバイルルータを会社で用意するのか。
あとは、コミュニケーションツールですね。当社はセキュリティの会社なので、やはりチャットでやりとりした内容だとか、ファイルをやりとりしたときのファイルの中身がどのように扱われるのか分からないと、いくら使い勝手の良いサービスでも利用しかねます。じゃあ具体的にどういう条件でツールやサービスが採用できるか否かを決めるのか…とにかく無数に細かい選択が出現して、導入までの道のりは険しかったです。
おかげで「安心して使えるちゃんとしたサービスを使う」ことの大切さがわかりました。「タダだからいいや」だと、後で心配ですね。

後編に続く

この記事を書いた人

土佐光見

リモートワーク研究所研究員・ライター。 webショップの企画運営、web制作、ディスクリプションライティングを経験し、フリーランスに。リモートで働く二児の母。趣味は読書、観劇、俳句。