在宅勤務、海外ではどうなっているの?各国の導入事情まとめ

海外の在宅勤務の普及動向と導入事情

働き方改革などで話題にはのぼりますが、いまいち普及が伸び悩む在宅勤務やテレワーク。海外ではどれくらい普及しているのでしょうか?各国の事情をまとめてみました。風土や国民性の違いなどで事情も様々なようですよ。

1. 在宅勤務制度は縮小傾向? ── アメリカ

アメリカでは担当する業務内容や範囲、難易度、必要なスキルなどがまとめられた Job Descriptionと呼ばれる記述書により、個々の仕事範囲と責任は明確化されるのが基本です。このため、目標管理と成果から業績評価を行い、報酬を決定する制度が定着しています。また、労働時間管理の制約も設けられておらず、日本に比べて在宅勤務の導入に関する障壁が少ないと言えます。

交通混雑の緩和やオフィスコストの削減、人材を確保する上でのインセンティブとして、また9.11以降は事業継続面での機能分散化の観点からもテレワークや在宅勤務は注目されており、現在は労働者の50%ほどがテレワーク出来る職に着いているそうです。

しかし一方で、個人の成果主義に走りがちでチームを維持しづらいなどの理由から、Yahoo!やIBMなどの大手企業が、テレワークを制限する方針を発表し、話題になりました。

2. 約半数が柔軟な働き方を選べる ── カナダ

雇用関連制度はアメリカに類似しています。年間労働時間は1,700時間程度。フルタイム就業者の3人に1人は柔軟なスケジュールで働くことが可能な環境です。

フルタイムの就業者のうち、在宅勤務が可能な人は全体の22%、フレックスタイム制を使える人は42%、テレワーク等の柔軟な働き方を選べる人は48%となっています。テレワークとフレックスを併用可能なのは15%となっています。

3. 子を持つ親には「フレキシブルワーク」 ── イギリス

イギリスは雇用主に有利な労働法制度となっており、比較的雇用市場は流動性が高く、長時間労働の習慣もありません。また、6歳以下の子供を持つ親、あるいは18歳以下の障がい児をもつ親に対して、仕事の時間数の変更、仕事の時間帯の変更、自宅で仕事をすることを要求する「フレキシブルワーク」を申請する権利があるため、テレワークに限らず、就労形態はある程度柔軟なようです。

4. 在宅勤務制度には関心が薄い ── フランス

そもそもがワーク・ライフ・バランスに配慮した文化です。労働者保護のために労働時間が厳しく管理されていて、特に残業時間に関しては厳しい制約が制度化されています。このため労働時間が管理しにくいテレワークにはあまり関心が寄せられておらず、特にテレワークに依存しなくてもよい環境が醸成されています。

首都パリへの一極集中が問題視されており、居住者を地方に分散させるために、政府主導でテレワーク利用者を支援する「テレワークセンター」が相次いで設置されましたが、テレワークを促す起爆剤としては弱かったようです。

5. コワーキングスペース利用やSOHOが主流 ── ドイツ

90年代不況時における雇用維持施策としてジョブ・シェアリングが広く導入され、その結果、労働時間の短縮化、柔軟化に成功しました。これにより法定労働時間を超えて働く就業者が1割未満に低下しています。最近ではMulti-locational eWork(どこでもオフィス的な働き方)が増えていますが、コワーキングスペースの利用やSOHOに寄っていて、在宅勤務は少ないようです。

6. テレワーク実施率はEUで5番目 ── フィンランド

フィンランドでは、仕事に対する個人の満足度やワークライフバランスの実現に注目しており、ワークプレイス改革の一環としてテレワークを推進しています。テレワークの実施比率はEU内で5番目に高くなっています

通勤距離が年々長くなる傾向にあるフィンランドでは、その削減のためにテレワークが導入される事例が多いようです。また、政府がテレワーク推進プロジェクト「Tykes」を、年間1,500万ユーロの資金を投じて運営しており、大々的にテレワークの推進が取り組まれています。

7. 目標水準には届かず… ── 韓国

韓国では、テレワークや在宅勤務などを「スマートワーク」と位置付け、電子政府の進展を背景として2010年から大統領のリーダーシップで推進されています。

ワーク・ライフ・バランスの向上を目指し、2015年までに官民の30%でテレワークを実施する目標を掲げていましたが、その目標水準には遠い実態となっています。日本と同じく、伝統的な長時間労働や会社への帰属意識が高く、まだまだテレワークのメリットを疑う傾向が強いようです。

8. まだまだ発展途上 ── シンガポール

シンガポールも多くのアジア諸国に見られる、固定時間制度やフルタイム雇用が目立ちます。

しかし、労働力の3割を外国人に依存しており、慢性的な労働力不足が問題。これを解消するために、女性を中心とした国民の労働力市場への参加を促すために柔軟な働き方を促進しています。政府はフレックス・タイム、フレックス・プレイス、パートタイムなど、柔軟な働き方を導入する企業を支援していますが、在宅勤務などに関してはまだまだ発展途上の段階です。

日本の在宅勤務の現状

2017年の総務省発表に寄れば、テレワークの普及率は13.9%。年々微増してはいますが、まだまだ「普及している」とは言い難い現状です。

海外の事情を振り返ってみても、日本と同じように会社への帰属意識やムラ文化の強いアジアでは、普及率も足踏み状態と言えます。しかし一方でどの国においても「ワーク・ライフ・バランス」が意識され始めている傾向があり、やはり柔軟な働き方やその多様性はこれからの時代必要だと認識されているようです。

テレワーク導入のためには、セキュリティ問題や社内の意識改革、個人のセルフマネジメント能力の向上など、確かにクリアすべき課題は多くあります。しかし、働く場所や働き方を自由に選べれば、それまで「事務所へ出勤する」「決まった時間に働く」というハードルを超えられないために埋もれていた人材が、活躍することができるかもしれません。

海外の普及事情も鑑みつつ、テレワーク導入について再考してみてください。テレワーク導入へのステップについては次の記事で!

この記事を書いた人

土佐光見

リモートワーク研究所研究員・ライター。 webショップの企画運営、web制作、ディスクリプションライティングを経験し、フリーランスに。リモートで働く二児の母。趣味は読書、観劇、俳句。