リモートワーク導入ステップ

一般の会社では、社内のルールやコミュニケーションツールはオフィス勤務を前提に整備されています。そのため、単純にリモートワークする社員を1名、2名と増やしてみても業務効率が落ちる、コミュニケーションがうまくとれないといった問題が発生しやすいです。

新しい取り組みに試行錯誤や小さな失敗はつきものですが、関係者の混乱をおさえつつ、協力を得やすくするためにも、効率の良い順序で進めると良いでしょう。

ここでは、「オフィスワークだけの会社」が「リモートワークも普通な会社」に変化するためのステップを紹介します。

1. 目的を明確にする

目的
まず「なぜリモートワークを導入するのか」を整理します。導入推進者としては当たり前なことでも、会社やチームのみんなが同じように考えているとは限りません。推進者の考えの方が少数派であることもあります。

強い思いがあるのは良いことですが、そのまま走り出す前に、冷静になってみんなが理解、共感しやすいロジックを考えることが大切です。自社の課題は何か、なぜリモートワークがソリューションになるのか、どういう状態を目指すのか、このような問いに対して、分かりやすい回答ができるようにします。

2. 経営レベルで認識を合わせる

認識
理解しやすく、共感を得られそうなロジックができたら、経営レベルで認識を合わせましょう。リモートワークを実践するには、現場のマインド、就業規則等のルールや業務フロー、コミュニケーションツールなど広い範囲で影響が出てきます。

理想は社長や理事長といった組織のトップにバックアップしてもらうことです。トップがリモートワーク推進の意思決定を明確にしていれば、あらゆる部門で協力が得やすくなります。

ご自身がトップの立場であれば、意思決定を経営層に伝え、理解をそろえることが大切です。オフィスワークに最適化している状態からリモートワークが許容できる状態に移行するには、様々な課題が出てくるはずです。一時的に作業効率が落ちたり、現場が戸惑ったりした場合でも、挑戦を続けられるようしっかりと意志を伝えることが大事です。

トップや経営層が「なぜリモートワークを推進するのか?」について、同じロジックを思い浮かべられるようになれば、次のステップにスムーズに進むことができるでしょう。

3. 導入のために「マインド」の準備をする

リモートワークの準備というとルールやツールを思い浮かべることが多いのですが、それらを使いこなせるかどうかは関係者のマインドにかかっています。ルールやツールに比較して抽象的であるため、短期的な成果が見えにくですが、全ての取り組みの基盤になる大事な観点です。

以下では、リモートワーク導入において、重要な役割を果たすマインドを3つご紹介します。

①会社としての戦略と考える


一般に、リモートワークは個人のワークスタイルであり、個人レベルの要望を満たすために導入されているという意識を持つ人が多いようです。しかし、このようなマインドでは何か問題が起きたときに、個人のワークスタイルを非難の対象としがちで、リモートワーカーとオフィスワーカーに対立が起きやすくなります。

リモートワーカーとオフィスワーカーが協力して課題を乗り越えていくには、双方が向き合って対立するのではなく、同じゴールを見て助け合うことが大事です。経営陣やリモートワークの推進担当者は、リモートワークを会社の戦略として位置付け、説明会やヒアリングを活用して、理解を促す活動を続けましょう。

②当事者であると考える


「リモートワークの成否はリモートワーカーのマインドやスキルにかかっている」と考える人が多いのですが、オフィスワークをする社員と連携してチームで作業する場合、むしろオフィスワーカーのマインドやスキルにかかっているという側面があります。

例えば、オフィスワーカーだけで勝手に話を進めてしまったり、リモートワーカーに重要な情報を共有しなかったりすると、高度なスキルを持っているリモートワーカーでも成果を出すことは難しくなります。

逆に、オフィスワークをする社員が「会社の重要戦略であるリモートワークの成否は自分にかかっている」という認識を持っていれば、場所に依存したコミュニケーションを避け、積極的にツールを活用するようになり、場所の制約を超えたチームワークが生まれやすくなるでしょう。

③リモートワーカーを標準にする


リモートワークを導入する際には、会社のルールや業務のプロセスをオフィスワーカーに合わせるか、リモートワーカーに合わせるかという議論が頻繁に発生します。

トライアルや導入当初はリモートワーカーが少数派であるため、オフィスワーカーの都合が優先され、リモートワーカーは多少不便でもオフィスワーカーのスタイルに合わせる、我慢するといったことが起こりやすくなります。例えばオフィスワーカー同士が大事な話を口頭で済ませていると、リモートワーカーはそれに気づかず、適切な対応をとることができません。そのため、特に用件がなくても情報をもらうために自分から状況確認をするなど、非効率な作業を行うことになります。

リモートワーカーとオフィスワーカーが混在するチームでは、原則リモートワーカーに合わせるという方針を最初に打ち出しておくことが必要です。その上で、方針が掛け声だけにならないために、経営層や現場のマネージャ、リーダーが率先して実行すると良いでしょう。

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4. 導入のために「プロセス」の準備をする

オフィスで働く社員とリモートワークをする社員が混在するチームが円滑に業務を進めるためには、就業規則等の見直しだけでは不十分です。リモートワークの社員を想定しても、各種業務が問題なく遂行できるよう業務のプロセスを見直すことが大切。気をつけてほしいのは以下の4つです。

①業務プロセス見直しの進め方


最初に現状の業務プロセスを確認することから始めましょう。業務プロセスが正確に表現された資料があればそれを利用します。資料が古くなっていたり、不足している場合には実態に即して更新しましょう。

業務プロセスを書き出すことができたら、各作業のうち、オフィスにいないと対応できない部分を把握します。例えば、社内の機材や設備を利用しないと完了できない作業や、客先に訪問しないと問題となる作業などです。

そして、リモートワークの社員が対応できるようにするには、どのような工夫が必要か検討します。受発注や請求など、社外に影響が出るプロセスは特に準備や説明が大事です。

リモートワークでの対応が難しい作業は、オフィスワークの社員が対応するという方法もありますが、働く場所に依存した不公平が出るためお勧めしません。トライアル開始の時点で完璧に整備する必要はありませんが、できる限り働く場所に依存して対応できる人とできない人が生まれない運用を目指しましょう。

②紙の文書が関係するプロセス


業務の中に文書を印刷して配布するようなプロセスがある場合、リモートワークで対応するのは難しくなります。また、稟議書など印刷した文書に捺印が必要なプロセスも見直しが必要です。

紙媒体を使ったプロセスをリモートワークに対応させるには、電子化(ペーパーレス化)が有効です。電子化はリモートワークに対応できるだけでなく、保管スペースの削減、印刷コストの削減、災害対策やセキュリティ強化にもつながります。配布資料はメールに添付するか、ファイルにアクセスするURLを共有するようなプロセスに変更すると良いでしょう。

稟議など承認プロセスが必要なものは、メールベースでの承認プロセスやワークフローシステムの導入を検討します。こちらもリモートワークに対応できるだけでなく、処理の迅速化や承認進捗の見える化にもつながります。

契約書への署名・押印についてもクラウド上で完結できるサービスがあります。郵送や印紙の費用が節約でき、契約までの時間短縮の効果もあります。取引先との合意が必要ですが、双方にメリットが大きいサービスですので、ぜひ確認してみてください。

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③会議が関係するプロセス


オフィスの会議室で定例会議を行うようなプロセスがある場合、社外からでも参加できるように見直しが必要です。

オンライン会議サービスには、無料または安価で利用できる高品質のものが多数あります。会議室にオンライン会議用のモニタ、マイク、カメラを用意して、それらを活用すればすぐに運用を始めることができます。

会議室と各自PCの比較
一般に、オンライン会議には大きなモニタなどの機材が必須と考える担当者が多いですが、各自のPCから個別にオンライン会議に参加する方が会議がスムーズに進行するケースが多くあります。特に、オフィス側の会議室にたくさんの人が集まって、そこに少数のリモートワーク社員が参加する場合には、以下のような問題が発生しやすいため注意が必要です。

  • 会議室側で同時に話す人がいるとリモート側が正確に聞き取れない。
  • 会議室側で小声で話す人がいるとリモート側が聞き取れない。会議室側は敢えて大きな声を出さないといけないのでもどかしく感じる。
  • 会議室側でカメラに映らず相談している気配があると、リモート側が疎外感を持つ。
  • 会議室側はカメラなどのセッティング負担が大きいので、オンライン会議を避けたくなる。その結果、リモート側との対話が減少し、認識齟齬や対立が生まれやすくなる。

各自のPCから会議に参加する場合の工夫
各自のPCから個別にオンライン会議に参加すれば、全員の環境がそろうので、聞き取りにくさや負担の不公平感が大幅に改善されます。
しかし、周囲が騒がしくて迷惑をかけたり、近くに参加者が座っていてハウリングが起きやすかったりなど、別の配慮も必要になります。各自のPCから会議に参加する場合には以下を参考にすると良いでしょう。

  • 周囲の声やノイズをひろわないように、人の少ない休憩スペースや小さな会議室を利用する
  • 参加者同士が近くに座るとハウリングが起きやすいので、少し離れてイヤフォンやヘッドセットを使う
  • 上記の点を容易にするため、各自がカメラ付きノートPCやスマートフォンを使って参加する

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④特定の場所に集まるプロセス


オフィスの大きな研修室などを前提とした全社集会や研修、イベントもリモートワークの導入で見直しが必要になります。

経営者からの年次総括や部門長の方針説明といった一方向がメインとなるコミュニケーションであれば、録画や録音を行なって共有することで情報の格差を解消することができます。

合宿や年次の懇親会など大きなイベントについては、リモートワークの社員も参加できるように交通費を支給して来てもらう形が良いかもしれません。特に一緒に運動をしたり、出し物をしたりといった活動が含まれる場合は、リモートで参加すると疎外感を強めてしまいます。

研修やワークショップなど規模が小さく、頻度も多いものに関してはオンラインでの実施を検討してみます。オフィスでの研修を録画する、配布資料やアンケートを電子化する、大人数で利用できるオンライン会議ツールを活用するなどの工夫を組み合わせることで多くはオンラインで実施可能になります。

研修やワークショップがオンラインで実施可能になれば、各自のタイミングで受講したり、講師が毎回時間をとって説明したりする必要がなくなります。日程調整や実施のコストが大幅に削減できる可能性が高いので、ぜひ検討してみてください。

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5. トライアルを実施する

トライアル

準備が整ってきたら、トライアル(試行)を実施します。

組織の規模によってトライアルの範囲は異なりますが、リモートワークへのニーズや関心が高いチームで実施すると効果的です。
トライアル期間では予想していなかった課題が発生したり、対策の効果を確かめるために予定以上の時間がかかったりすることがあります。そのため、実施前からトライアル期間を決めて、それを厳守することは難しいかもしれません。状況に応じて延長や中断を判断できるように予め関係者と認識を合わせておくと良いでしょう。
また、トライアル期間で検証したい点を整理しておくと、関係者の理解が得やすくなったり、次のステップに進む判断が行いやすくなります。ただし、トライアルが始まってから検証したい点が変わることもよく起こりますので、トライアル期間の中でも定期的に見直しを実施する機会を設けておきましょう。

まずは小規模チームでトライアル運用を実施するのがオススメです。小規模チームでのトライアルには以下のようなメリットがあり、実施することでリモートワーク導入の成功確率を大幅に上げることができます。

  • 想定される業務が絞られるので、ルールやツールの整備を短期間で実施できる
  • 影響範囲が限定されるので、ルールやツールの試行錯誤ができる
  • リモートワークに抵抗感の薄いチームに協力を依頼しながら試行錯誤できる
  • 組織全体に導入するかどうかの判断材料となる指標が測定できる

トライアルチームの成否は本格導入へのステップとして大きいので、ぜひ成功させたいものです。しかし、どのような部署・チームにトライアルを要請するかの判断に困るケースも多く見られます。
トライアルチームを選ぶ場合に「こういった条件に該当するチームがおすすめ!」というポイントも合わせてご紹介します。

①リモートワークを実践できないと困るメンバーがいる


育児や介護など家庭の事情などでリモートワークを切望しているメンバーがトライアルに参加すると、リモートワークを成功させようとオフィス以上に集中して頑張るため、生産性がより向上しやすくなります。また、プロセスやツールについて真剣にフィードバックをしてくれるので、課題の洗い出しや改善の取り組みをスピーディに行うことができます。

②業務がPCだけで完結しやすい


リモートワークではITツールを介してコミュニケーションをとるため、デスクワーク系の業務の方が導入を進めやすい傾向にあります。

③ITリテラシーが低くない


リモートワークには適切なITツールの活用が非常に重要です。少なくともチャットのようなリアルタイムのテキストコミュニケーションにある程度慣れていることが望ましいです。口頭ではそれほど問題とならない台詞も、文字にするとトゲのある表現となることも多いため、そのような点に配慮できるメンバーが望ましいでしょう。

④新しい取り組みに前向きなマネージャがいる


新しいもの好きであったり、これまでの慣習にとらわれすぎないマネージャがいる部門に、トライアルの候補として声をかけてみましょう。このような性質を持つマネージャは多少の失敗も前向きにとらえて一緒に改善を考えていける可能性が高くなります。

6. フィードバックを取り入れる

フィードバック
トライアルを始めると、様々な立場から多様なフィードバックをもらうことになります。フィードバックには賛否両論ありますが、不満や問題の方が大きな声となって上がってくる場合が多いです。業務への影響の大きさや関係者の多さなどを踏まえて優先順位をつけ、着実に解決していきましょう。

声をあげにくい人もいる可能性があるので、フィードバックを待つだけでなく、定期的に個別またはグループ単位でヒアリングを行うと良いでしょう。

リモートワークを導入したことで業務に悪影響が出ると、リモートワークの印象が悪くなり、あっという間に取り組みが形骸化してしまいます。日々発生する課題に真摯に向き合って、迅速に解決していくことが大切です。

7. 正式に導入する

合意
トライアルで大きな課題がなくなれば、いよいよ正式にリモートワークを導入します。

仮運用としていたものを正式なものとして関係者に周知したり、トライアル利用していたツールの契約を行ったりします。また、リモートワークの対象範囲をトライアル実施チーム以外に広げたり、別のチームでトライアルを始めたりしても良いでしょう。

トライアルが終わって正式な運用が始まっても、対象者の広がりやビジネスの環境変化などに伴って新たな問題が発生します。このような問題に対処するために、定期的に課題を確認したり、改善の取り組みをチェックしたりする機会を設けることが大切です。

補足. 経験者・専門家を頼る

専門家
リモートワークを導入するためには検討すべきことがたくさんありますが、社内検討だけでは視野が狭くなってしまい、課題解決の糸口が見つかりにくいこともあります。また、経験値や専門知識が不足しているため、判断に迷って時間だけが過ぎていくといった事態も起こりやすいです。

社内での検討に行き詰まったら、リモートワークを推進している団体や専門家に相談してみると良いでしょう。

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