オフィスとリモートの隙間を埋める!? 「サテライトオフィス」のメリットと導入事例

大企業も注目している「サテライトオフィス」

サテライトオフィスに注目が集まります。

在宅勤務やリモートワークなど、オフィスに出勤しない形の働き方を導入する会社が増えています。通勤に時間を割くことなく、どこからでも働けることは大変魅力的ですが、一方で「自宅では集中できない」「オフィス同様に働ける環境が整わない」などの問題も。

そこで注目したいのが「サテライトオフィス」。実際、リモートワーク制度とともにサテライトオフィスを複数持つ企業も増えています。今回はそのサテライトオフィスのメリットや注意点、事例などをご紹介します。

サテライトオフィスとは?

サテライトオフィスは本社に対する「衛星」のようなもの

「サテライト」という言葉には「衛星」という意味があります。これを踏まえて「サテライトオフィス」とは、企業の本社・本拠地から離れた場所に設置する小規模なオフィスの総称となっています。

「自宅で仕事場の確保が難しい」「設備が十分に整わない」「インターネット環境が適していない」など、在宅勤務で起こりがちな問題を解決することができ、かつ地方人材の確保や離職率の低減など多くのメリットがあるとされています。

これだけだと支社や営業所と代わりないように思えますが、「何を目的に設置されているか」が違います。サテライトオフィスは、あくまで従業員の働きやすさや立地的な利便性に特化しているというのがポイント。支社や営業所のように本社からある程度切り離されて運営するのではなく、働く場所が分かれているだけで直属している状態です。社員だけが使用できるコワーキングスペースのようなものと捉えても良いでしょう。

サテライトオフィスの種類

サテライトオフィスには、大きく分けて4つの種類があります

①都市型サテライト

都市部の主要拠点に近い場所に設置されるものを「都市型サテライト」と呼びます。

本社に次ぐ拠点として扱われることが多く、また本社が地方にある企業は、都市部のための営業拠点として設置することが多いようです。本社機能を近距離で効率よく分散することができるので、よりフットワークの軽い営業活動が期待でき、また災害発生時の事業継続対策にも効果的です。

②郊外型サテライト

都市部から離れた、ベッドタウンと呼ばれる郊外に設置されるものを「郊外型サテライト」と呼びます。

従業員の生活エリアに近い拠点を置くことで、郊外や地方在住の従業員の通勤時間を短縮できるという魅力があります。また、近年叫ばれるワーク・ライフ・バランスの実現にも非常に有効です。

③地方型サテライト

都市部に本社を構える企業が、遠く離れた地方に設置するものを「地方型サテライト」と呼びます。

地方活性化や地方人材の雇用促進に繋がるため近年特に注目されており、国や複数の地方自治体が積極的に誘致している例もあります。地方型サテライトに関しては、ワーケーション支援や研修、リフレッシュなど多様な目的に使用できそうですね。

③共用型サテライト

自社のみで使用する「専用サテライト」に対して、他社とオフィススペースを共有する形のものを「共用型サテライト」と呼びます。

共有型サテライトオフィスは「シェアオフィス」や「コワーキングスペース」と呼ばれており、フリーランスや起業家など多様な人に開かれた環境になっています。

サテライトオフィスのメリット

サテライトオフィスのメリットは4つ!

①移動コストの削減

より従業員の生活エリアに近い拠点が用意できれば、それだけ通勤にかかる費用を抑えることができます。また各地へ営業や打ち合わせに行く場合にも、本社を経由しなくてよくなるので、細かい移動コストの削減にも繋がりますね。

サテライトオフィスを複数構えて従業員を分散し、賃料の高い都心のオフィスを縮小することができれば、トータル的に事務所にかかる固定費を節約することも可能。サテライトオフィスの上手な運用はフットワークを軽くすることにも繋がりそうです。

②地方人材の獲得

本社勤務を義務付けないということは、それだけ多様な事情を抱える人材にもアプローチできるということです。しかし、一方でフルリモートという働き方にはメンタル面や設備面での不安が付きもの。サテライトオフィスを置けば、地元離れられない人やUターン就職を希望する人、地方移住を望む人などをまとめてケアしながら一緒に働くことができます。離職率を下げることにもつながるでしょう。

特に地方でのサテライトオフィス設置に関しては、国や自治体も注目しており、さまざまな補助も発表されています。地域に密着しながら優秀な人材を獲得するチャンスもありそうですね。

③時間の有効活用

郊外や地方のサテライトオフィスのメリットは、費用の削減のみならず、通勤「時間」の削減にも繋がります。通勤時間を大幅に短縮することができれば、毎日の通勤にかかっていた時間を有効活用することも可能。時間への余裕は、従業員のワーク・ライフ・バランスの実現にも有効ですね。

④事業継続計画(BCP)対策

「事業継続計画(BCP)」とは、自然災害やテロ、パンデミックのような緊急事態に直面したときに、企業が事業を継続させたり、早期復旧を叶えたりするための計画のことを指します。

直近では2020年に始まった新型コロナウイルスの流行やそれに伴う緊急事態宣言、また記憶に新しい2011年の東日本大震災や、毎年各地に深刻な打撃を与える台風被害などさまざまな事例から、交通網の麻痺や停電、都市のロックダウン等企業の事業継続が困難になる事態を想定し、これに備えることは必要不可欠です。

緊急事態が起こった際に、できるだけ早く会社の機能や環境を復旧させるために、あらかじめサテライトオフィスやリモートワークを活用してリスクを分散させておくことは、今後の社会において企業の大きな力となるでしょう。

サテライトオフィスの注意点

サテライトオフィスを導入するには、もちろん注意点もあります。

①コミュニケーション

サテライトオフィスの設置で特に気をつけたいのがコミュニケーション面です。本社から物理的に切り離されることで、サテライトオフィスだけが置いてきぼりになってしまう事態を避けなければなりません。

ペーパーレス・web会議・チャットツール・仮想オフィスツールなどを積極的に導入し、コミュニケーションの基本をwebに置くように心がけましょう。進捗管理や情報の共有も細かく設定し、些細な認識の違いや情報格差を生まないように努めることが大切。小さい拠点に集まっている状態なので、リモートワークに起こりがちな孤独問題や雑談の不足がない分、本社とサテライトオフィスの断絶を見落としてしまいがちです。拠点同士が密に情報開示をし合うようにしてください。

②セキュリティ

拠点が増え、従業員がシームレスにそこを移動できるようになればなるほど浮上するセキュリティ問題。セキュリティチームを設けてきっちりとしたガイドラインを作成することが非常に大切です。またその啓蒙も怠らないように気をつけましょう。

特に不特定多数とスペースを共有する共用型サテライトオフィスにおけるセキュリティ対策は万全に。パソコンやスマートフォンの覗き見や、端末の紛失・盗難に関しても十分に注意喚起してください。また、実際に紛失や盗難に遭ってしまった際に素早く対応できるようなフロー作りもしておく必要がありますね。

③自己管理問題

サテライトオフィスも、リモートワーク同様自己管理が必須となります。上司がひとりひとりの業務進捗や目標の管理を徹底し、細かく声をかけるようにしておくと良いでしょう。相談できる環境や関係性もとても大切です。朝会や報告ミーティングなど、離れていても本社と時間を共有する習慣をつける必要がありますね。

自己管理意識はオフィス勤務でもリモート・サテライトでも、効率的に働くために必要なスキルです。適切な機会と環境整備を心がけてくださいね。

サテライトオフィス事例

あしたのチーム

株式会社あしたのチーム

会社全体の生産性の向上と地方創生にも目を向け、かなり早い段階からサテライトオフィス機能を採用している、株式会社あしたのチーム。”次世代に残すべき”企業等を対象としたグランプリ「第三回ホワイト企業アワード」テレワーク部門で大賞も受賞しています。

リモートワークラボのインタビューにて、リモートワークを使った具体的な運営方法や採用、地方創生への取り組みなどについてお話しくださいました。

株式会社日立製作所

株式会社日立製作所

2017年の10月から、働き方改革を推進する新しいサテライトオフィス「@Terrace」を東京都中央区八重洲に開設しました。それまでにも時間や場所にとらわれずに仕事ができる「タイム&ロケーションフリーワーク」を実現するため、首都圏のオフィス内に数カ所サテライトオフィスを設置していましたが、「@Terrace」更なる働き方改革の全社運動の一環として開設したそうです。

参考:[ニュースリリース] 働き方改革を推進する日立の新しいサテライトオフィス「@Terrace」を開設

富士通株式会社

富士通株式会社

「自席でもない 自宅でもない 第3のスペース」をコンセプトに、働きやすい環境整備のひとつとして、全国18ヶ所に社内サテライトオフィス「F3rd」を展開。さらに全国230か所以上の社外サテライトオフィスと提携し、「F3rd+」と総称しています。

参考:[働き方事例集] 富士通の働き方事例 テレワークの推進を通じて、オフィスの未来を考える

参考:[富士通株式会社] 働き方・働く環境・福利厚生

柔軟な働き方のためにサテライトオフィスを活用しよう

オフィスとリモートとサテライトオフィス。これで働き方はより柔軟になりそうです。

サテライトオフィスは、在宅勤務とオフィス勤務の間を埋めるもの。働き方の選択肢をもうひとつ広げてくれる存在です。サテライトオフィスを活用する中小企業に対して助成金を出している自治体もあるんですよ。

新型コロナウイルスの影響でオフィスを縮小したり、オフィスを持たない選択をする企業も増えています。それに伴う地方移住も注目される中、サテライトオフィスはより柔軟な働き方を実現するための手段のひとつとして今後もっと注目を浴びることになりそうです。

この記事を書いた人

土佐光見

リモートワーク研究所研究員・ライター。 webショップの企画運営、web制作、ディスクリプションライティングを経験し、フリーランスに。リモートで働く二児の母。趣味は読書、観劇、俳句。