【ボクらの働き方】倉貫義人(株式会社ソニックガーデン代表) × 仲山進也(楽天株式会社 楽天大学学長/仲山考材株式会社 代表取締役/横浜マリノス株式会社 プロ契約社員) × 宇田川元一(埼玉大学准教授)

【ボクらの働き方 第1回】倉貫義人(株式会社ソニックガーデン代表) × 仲山進也(楽天株式会社 楽天大学学長/仲山考材株式会社 代表取締役/横浜マリノス株式会社 プロ契約社員) × 宇田川元一(埼玉大学准教授)

第2回:「心理的安全性」が良いチームを作る

宇田川

今回鼎談のお話を頂いたので、仲山さんの「ジャイキリ」の本読みました。すっごく面白かったです。

仲山

ありがとうございます!この記事をご覧の方のために補足すると、『今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則』というタイトルの本で、プロサッカー監督が主人公の人気マンガ『ジャイアントキリング』のシーンをケーススタディーにしたつくりなので、通称「ジャイキリ本」と呼ばれています。

宇田川

あれはね、まず4月から自分の大学のゼミでやりたいなと。

仲山

ああ、それは嬉しいです。どんなふうにでしょう?

宇田川

日本の大学生が就職希望先で選ぶ会社が、銀行と保険会社ばっかりだっていう記事が先日ちょっと話題に上がってびっくりしたんですけど、でも実際に日本の若者の統計を見ると、先進国の統計を取った国の中で1番「自信がない」んですよね。で、試しに以前勤務していた大学で、入りたての学生に、「大学で何したい?」って聞いてみたら、「友達を作りたい」って言うんですよ。
僕はこれ結構怖いことだと思っていて。

倉貫

怖い。

宇田川

はい。「友達」というなんとなくの集団の中に自分を埋め込んで、自分を決して「問われないで生きたい」って、そういうのって「自信がない」ということにつながってるじゃないですか。でもそういう人たちって、日本の大学生の中ではかなりマジョリティなんだと僕は思うんです。それで仲山さんの本を読んだら、そういう人たちに対して、どうアプローチしたらいいのかっていうヒントをもらった気がしたんですよね。

仲山

といいますと?

宇田川

まず、自分のある程度の規律をなんとなくつかんで、そこから意見を言い合うストーミングをして、自分たちで作ったルールでトランスフォームしていくっていう。ああいうプロセスをもっと学生に経験してもらいたいなって思ったんです。僕は大学の一教員として見てるんですけど、これはおそらく会社でも同じなんだろうなっていうのを間違いなく想像するんですよ。

仲山

ここも補足すると、人が集まってチームになるプロセスには4つのステージがあって、

(1)フォーミング(形成期):相互理解を進めて「このメンバーなら意見を言っても大丈夫かな」と思える心理的安全性を高める
(2)ストーミング(混乱期):メンバーが意見を場に出し合う。試行錯誤のため一時的にパフォーマンスが下がる
(3)ノーミング(規範期) :自分たちのやり方やルールの共有が進み、息が合うようになってパフォーマンスが上がる
(4)トランスフォーミング(変態期):チームがひとつの生き物のように、あうんの呼吸で動ける理想の状態になる

という考え方を大切にしています。

宇田川

組織づくりのテーマを扱うようになったきっかけってあったんですか?

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仲山

僕は楽天が20人だった頃に入社して、その後数年で数千人規模に成長したんですけど、その頃に『あなたが伸びれば会社も伸びる』という本を読んだんです。何百人かのアメリカの起業家にインタビューした結果、企業の成長ステージを体系化しました、という内容なんです。最初の創業ステージはこんな状況で、そのうちこんな問題が出てきて、それを乗り越えると次のステージに進んで、乗り越えられないとこんな風にダメになるっていうのが書いてあって。それを読んだ時に、「日記だ!」って思ったんです。

宇田川

ああ、なるほどなるほど。

仲山

「書いてあること全部あった! しかもほぼこの順番で経験済み!」みたいな感じで。だからこれは自分の財産だなと感じました。たぶん今までの会社が30年とか40年で経験したことを、スピードが早い業界なだけに5年くらいで一通り体験できたということに価値があるなと思って。日替わりで成長痛を体験する感じだったので、まあしんどかったですけど。でもそれを、出店している店舗さんに伝えたいと思った時に、体験してない組織の問題というのをどう伝えていいのかわからない。

倉貫

難しいよね。

仲山

情報として知るだけでは、まったく自分ごとにならないんです。たとえば、『楽天ドリーム』という出店者向け月刊誌があって、毎号店舗インタビューで今までの経緯なんかを話してもらうんですけど、がんばっているうちに大体どこかで売り上げが急に伸び出して、受注がパンクして、寝られずに出荷をして、という失敗を経て、バックオフィスのシステムを整備して…というのが、お決まりのパターンなんです。でも、それを事前に読んだはずの人たちもやっぱりその後同じ道をたどるわけですよ。知っていても起こってみないと自分ごとには感じられないのが「組織」の問題の特徴だなと思って。

宇田川

そうですね。「未知の経験」は体験できない。

仲山

その点、「この商品の売り方を考えよう」というテーマであれば、「ではこの商品ページのラフ案を考えてみましょう」というグループワークでもすれば、だいたい大事なポイントを疑似体験できるんですけど、組織の問題を疑似体験してもらう方法がわからない。伝えたいメッセージはあるけど、伝え方がわからなかったんです。
そこで行き詰まっていた頃に、僕の今の相方であるチームビルディングファシリーテーターの長尾彰さんに出会いまして。彼が言うには、「自分は遊びみたいな体を動かすゲームを通して、チームで何かをやるための気づきを促すようなプログラムをやっている」と。
これは僕が求めていたものかもしれないと思って、自分の問題意識を話して、「コラボするのはありですか?」と聞いたら、「面白そうだからやりましょう」ということになって、そこから100時間くらい話し合いをした結果、今やっている3ヶ月間のチームビルディングプログラムができたんです。

倉貫

ほうほう。

宇田川

前に僕が倉貫さんと対談させてもらった時に、共通してるなって感じたところがあるんですけど…「ストーミング」ってすごくチームビルディングというか組織作りに大事なところだなって思うんです。でも大企業の人とか、そういう人たちと話してると、あれをすごく嫌がるんですよ。

仲山

まさに。一時的に混乱した状態になるので、効率重視や事なかれ主義の企業文化としては嫌なんですよね。

宇田川

そもそも名の通った大企業で働いてちゃんと給料毎月もらえてたら、自分の働きが会社の中でどう繋がってるのかってのがよく見えなければ問題をとりあえず起こさないっていうのが、その中で最適に見えるんだと思うんですよ。でも、本当はそれが本質的な解決ではないのもわかっているから嫌なんだけど、その状況を変えるっていうのはあまりにもハードルが高い。そういう問題に対して、僕自身から示唆がないかなっていうのをずっと思っていたんですよ。
それは「心理的安全って大事」という話じゃないかと。
でもそうするとね、次に必ず「心理的安全がなければできないんですね」って言われるんですよ。そうじゃないんだと思うんですよ。そういうものを「作る」の。

仲山

このメンバーなら自分の意見を言っても大丈夫そうだな、と思えるだけの「心理的安全性」の高い関係性を作ることこそが、フォーミングステージでやるべきことです。

宇田川

そうそう。じゃあ作るのを誰がやるのかっていう問題があって、たぶんそれにはプロセスがすごく大事なんだと思うんですよ。

倉貫

それぞれが思ったことをちゃんとできるようにする。そのためには「心理的安全」がないとできない。でもそれはそもそも誰が作るのか。

宇田川

そう。あといろんな人に言われるのが、ホラクラシーをやろうと思ったら信頼がなければダメだっていう。

倉貫

よく言われますね。

宇田川

いや、そうじゃないでしょと。やるから信頼が出てくるんでしょ。

倉貫

逆転してると。

宇田川

そうそう。で、みんなそうすると出てきた結果のものをツールとして自分の会社に導入しようとする。

倉貫

他の人から「倉貫さんの会社、それホラクラシーだよね」とか言われるんですけど、僕はホラクラシーってあとから知ったタイプなので。あとなんか最近また新しいなんちゃらっていう…

宇田川

ティールでしょ。

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倉貫

あ、そう。「ティールですよ」って言われて、「ほお?」って(笑)。でもそういうのって、言われて「そうか」って思うだけで、じゃ「そっちをやりましょう」ってなっちゃうと、たぶん手段と目的を履き違えるんです。「信頼関係がないといけないんで、信頼を作りましょう」なんて、どっちが先なんだっけ?みたいな。

仲山

ティールというのはどういうことなんですか?

宇田川

まだ自分は勉強中です。最近よく出てきてますね。そういうのってどんどん出てきて、僕もその度に聞かれるんですけど、「ごめんなさい、よくわかんないんです」と。別に勉強する事自体はいいことだと思うんですけど。
でも、大事なことって、どういうツールがいいかじゃなくて、どういうプロセスでやるか、何のためにやるのかじゃないんですか?って思いますね。

仲山

「チームになるにはストーミングを超えることが大事」という話をすると、みんなすぐストーミングから始めようとするんです。まずはフォーミングを進めないといけないのに。

宇田川

なぜそこをすっ飛ばすのかっていう。

仲山

例えば社長が会社に帰って「ストーミングだ!」と言って、いきなりメンバーに意見を言わせようとしたりする。いやそれはストーミングではなくて、フォーミングの入り口で「社長ご乱心!」となっているだけですよって話をするんですけど(笑)。「お前ら意見を言え!」っていくら言っても、心理的安全性がなければそれはストーミングじゃないので。

倉貫

ご乱心(笑)

仲山

その点、倉貫さんの会社は、採用前にストーミングを超えられているように見えます。もし入社後に初めてストーミングが起こる流れだとすると、いよいよみんなが本音を言い出した時に、その場に一緒にいちゃいけない人が一緒にいたんだねっていうのが判明する場合があります。

宇田川

満を持して判明するんですね。

仲山

要は譲れないところがバッティングしてるのに、今まではお互いに言わなかったから一緒にいられた。でも「うちの会社の価値観ってこっち側なんだよね」と言われた瞬間に、「僕はいちゃいけない人であることが判明してしまった!」みたいなパターンです。それで辞めていくということって結構起きる。ここでチームが一回解散をするんです。で、残ったメンバーだと先に進めて、よりチームっぽくなれたりする。

倉貫

ひと山越えてね。

仲山

倉貫さんが言っている、「採用に時間をかけて」とか「うちの会社はこうだからね」っていう前提の説明を入り口のところでやっているっていうのは、後に解散しなくて済むように、入り口のところで一緒に越えられる人しか入れないようになっているってことなんですよね。

倉貫

はい。先に知っておいてもらって、本音を話す時に「あ、こんなんじゃなかった」って言わないようにしたいなと思っていて。

仲山

だから採用の時点で心理的安全性が高い状態を作り出せているってことだと思います。ほとんどの会社はそこまでやってないから、だからうまくいかないんですよね。

倉貫

これってたぶん、チームにもあるけど、個人にもありそうな感じがしてます。今の会社は割と成熟しているメンバーが揃っているので、もうストーミングが終わっている状態。

仲山

自分の中で自分のルールが確立していると。

倉貫

もうみんなそれなりにでき上がってるんだけど、やっぱり中途で入ってきた人は、価値観のところはわかっているんだけど、心理的安全が「本人には」ない。

仲山

まだ自信がないんですね。

倉貫

そうです。自信と信頼って紙一重っていうか同じようなもんだと思っていて、例えば社内だと割ときつめのことも冗談で言うんだけど、後から入った人は自分に自信がないから、その冗談みたいな言葉でちょっと傷つく、みたいなことがあるんですよ。でもそこで仕事をしていってもらって、自分自身が仕事ができるようになってきて引け目がなくなると割と強い冗談にも対応できるようになる。

仲山

「強めの冗談」ってどんな感じですか?

倉貫

例えば僕が、「プログラムができないやつはうちの会社としては全然ダメだ!」みたいな話をね。(笑)。そういうこと言うと、ドキッとするんですよ。「あれ、これ俺のこと言ってんのかな?」みたいなことを勝手に思っちゃう。

仲山

自分に自信が持ててないと、「やばい」と焦る。

倉貫

そうそうそうそう。

宇田川

そこで言ってることの意味がわかってくるっていうか。やっぱり言葉ってコンテクストの中で初めて意味付けされてくるものな訳で、そのコンテクストが全然違うとなると、言ったことがどう解釈されるのかがわからないんですごい怖いんですよね。だけどその「違い」が「わかる」、そこができてくるっていうのが「心理的安全」って言われていることの中身なんだろうなってすごい思うんですよね。だから、そのために、「意外に違うね」「違っても別にいいじゃない」みたいなのが、できてくるのが大事なのかなって、聞いていて思いましたね。

倉貫

最初におっしゃってた「友達作りたい」とか、その組織の中で「みんなと一緒でありたい」みたいなところって、心理的安全が欲しいみたいなのかっていうと、ちょっと違う気がしていて。

仲山

心理的安全というのはあくまでも、「自分が思っていることを言っても大丈夫だな」と思える状態なので、ただ「仲良くしてほしいから言いたいことを我慢する」というのは、心理的に安全「じゃない」状態ってことですよね。

宇田川

要するに、周りと「同じにしようとする」っていうのが「友達を作りたい」で、「違っていい」っていうのが「安全」な状態っていうことなんじゃないですか?

仲山

「みんなと違うこと言いますけど」と「言える」っていう。

宇田川

それは例えば冗談を言っても「ちゃんと受け取るだろう」と思うから言えるわけですね。

倉貫

そうですね。

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